家の中がエルメスだらけに…
惚れたもの負け、という言葉を聞くことがありますが、特に従うべき義務もないのに、家庭内でこうしたパワーバランスが強く働くことを不思議に思います。またこの連載では育児・家事の女性側の負担が大きくなり苦労した話を聞くことが多かったですが、経済的負担が多くかかりやすい男性の辛さも身に染みます。
「しかし妻の頑張りもあり、娘は小学校受験を突破して私立小学校に入学しました。するとやはり周りも『すごい』と驚くので、お金はかかるけど妻のやっていることはやはり正しいのかと。ただ、その時娘の入学式に必要だからと、エルメスの70万円ほどのバッグを買ったんです。それが地獄の始まりでした」
有名な小学校のイベントにはエルメスのバッグが必須なのだと、祐介さんは再び妻からプレゼンされたそう。けれどたしかに、入学式ではほとんどの母親がまるで指定されたかのようにエルメスのバッグを持っており、やはり納得してしまいました。
「その頃から、妻はやたらとエルメスに通うようになりました。バッグは入荷が少なく、タイミングが合わないと滅多に買うことはできないとのことで、まあ立ち寄るだけならいいんですが、店に行くと食器やアクセサリーや小物など、何かしら購入してしまうんです。
家は普通のマンションなのに、気づけば部屋はエルメスだらけで……。欲しいものを買うならまだわかりますが、明らかに必要なさそうなものまで買ってしまう。妻も後から我に返るのか、フリマサイトで売ったりもしていましたが……。さすがにおかしいと注意してもまったく聞かず、真剣に頭を悩ますようになりました」
その頃、妻がクレジットカードで使う額は月に100万円近くなったこともあるそう。以前と違い子供用品ではなく、妻のエルメス製品が出費のほとんどを占めていました。
そして、あるとき残業明けに祐介さんが帰宅すると、元妻がやけにニコニコしながらこう言ったそう。
「とうとう待望のバーキンと出会えて、買ってしまった。だから来月のカード引き落としまでに200万円以上は口座に入れておいて欲しいと言われたんです。本当にお金がなかったので、一瞬目の前が真っ暗になりました」
余裕のなかった祐介さんは再びご両親に相談しようかと考えましたが、すでに大金を援助してもらった気まずさゆえに思いとどまりました。定期預金か保険の解約も浮かびましたが、しかし幸い、翌々月はちょうどボーナスが出るタイミング。ならば……と、祐介さんは禁断の選択をしてしまったのです。
「学生時代からの友人で、会社の同期でもある親友にお金を借りてしまったんです。かなり親しい仲なので、事情も正直に話してしまったんですが……これが大事になってしまうとは、このときは思っていませんでした」
来週公開の記事では、この借金による波紋、祐介さんにとっての理不尽な結果となってしまった結末を語っていただきます。
取材・文・構成/山本理沙
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