時代の潮目を迎えた今、自分ごととして考えたい社会問題について小島慶子さんが取り上げます。

「うちの高校生の娘は最近すっかりジェンダーにハマっちゃって、何かとうるさいんだよね。僕は全然ジェンダーとか気にしてないからそういう話はしないのだけど、ちょっとした言葉尻を捉えて説教されちゃうんだよ」

笑いながら話すその人は「僕はジェンダーの偏見のない人」という立ち位置で私に話しかけているようでした。しかしどうも「ジェンダー」という言葉を正確に理解しているか極めて怪しい。どうやら彼のぼんやりした理解では、「男と女の違いを声高に主張すること=ジェンダー」のようです。

 

彼の高校生の娘は、父親のそういう態度に苛立っているのではないか。無知を自覚せず、娘の話に真面目に取り合おうともしない父親に。そのくせ「僕はジェンダーに理解あるし気にしてないから!」と言ってのける無神経さ。そんな姿に嫌悪感すら覚えているかもしれない。そうだろうなあと、心底娘さんに同情したのでした。

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おそらく私と同世代と思われるその男性は、メルカリが公表した「説明のつかない男女の賃金格差」の話題が出た後に、先ほどの発言をしました。つまりは、女性の方が賃金が低いからってそんなに騒がなくてもいいじゃないか、別に差別しているわけじゃないよと言いたかったようなのです。それをニコニコしながら「だよね?」というトーンで私に話すのはどういうつもりか。