あなたは今住んでいる家に満足していますか? 
「素敵な家に住みたいけれど、何から始めればいいのかわからない」という方のために行正り香さんがヒントをお伝えする連載がスタートします! 子育てが一段落して暮らしが変わる方、納得のいくひとり住まいを作りたい方……  リノベーションだけじゃなく、家具や照明、カーペットなどを変える“模様替え”まで、行正さんが手がけた実例をご紹介しながら、納得のいく家づくりについて提案します。第一回目は、行正さんの長女・かりんさんがこの夏、デンマークに留学。寮の部屋づくりを通して、今後の連載についてお伝えします。

行正り香/ゆきまさりか料理家。デンマーク親善大使に選ばれる(2017年)など、北欧のインテリアに造詣が深く、近年はインテリアのコーディネートやリフォームのプランナーとして多数の家づくりに関わっている。30冊を越える料理レシピ本のほか、家づくりに関する『行正り香のインテリア 心地よく暮らすためのルールとアイデア』『行正り香の家づくり ヒュッゲなインテリア』の著書もロングセラーとなっている。子供向けスピーキング教材「カラオケEnglish」の開発も手がける。

 

一枚の絵画から考えていく。デンマークへ留学した娘の部屋づくり


はじめて東京でマンションを借りたとき、父は私を東急ハンズに連れて行ってくれました。「り香ちゃん、ここで必要なものを揃えなさい」。そう言われて、二人でエスカレーターを登ったり降りたり。布団、フライパン、コーヒーテーブル、サイドボードと、一通り必要なものを買ってもらい、近くの台湾料理屋に入りました。「これでそれなりに暮らせるな」とビールを美味しそうに飲む父の満足気な顔。なんだか忘れられません。

2023年の夏、私は長女・かりんと一緒にデンマークのIKEAをぐるぐる巡っていました。コペンハーゲンから電車で約3時間ほどの地方都市、オーフスに交換留学した彼女の部屋を整えるためです。住むのは学生寮ですが、そこに用意されているのはベッドとサイドテーブル、机だけ。共用キッチンで使う食器も含めて、必要なものは自分で用意しなくてはなりません。同じ寮生のお部屋をチラ見すると、私が一人暮らしを始めたときのような殺風景な部屋ではありません。ポスターや絵、観葉植物、棚にはアートブックが飾られてあって、さながら心地よいリビングルームのようです。さすがヒュッゲの国、と思いました。

[before]何もない寮の部屋。何を置くか、何色のものを置くか。どんな部屋にするかはその人次第です。

IKEAに行く前にかりんに聞いたのは、「どんな雰囲気にしたいか? テーマカラーは何にするか?」ということです。私の仕事に同行して、インテリアやリフォームの知識が少なからずある長女は、「部屋の色みは野崎さんの絵と同じ黄色からとりたい。いかにも女子の部屋という甘い感じじゃなくて、すっきりした部屋にしたい」と言います。小さなトランクに野崎義成さんの絵を入れた時点で、彼女の中にはすでに部屋の理想が描かれていたのです。

野崎義成さんの絵画。部屋のベースとなった黄色と青はこちらからリンク。

『行正り香のインテリア』『行正り香の家作り』という2冊の本を書かせていただき、インテリアスタイリストとしてのお仕事も増えたことで、家づくり、部屋づくりに関する私の知識は増えていきました。長女・かりんの部屋をスタイリングするときも、感覚的にアイテムを選んでいるようですが、以下のようなルールが頭にありました。

1 [配色ルール]ポイントとして目立たせたい色が黄色ならば、大きな面積のベッドカバーは反対色の青を選ぶ。クッション、花瓶、キャンドル立てなどの小物は黄色で揃える。

2 [サイズルール]最初に選ぶのは大きな印象を与え、部屋のトーンを決めるベッドカバーから。

3  [形状ルール]中性的な(ピンクや赤ではない)配色を選ぶならば、ランプなど小物の形状は、丸みやドレープのあるフェミニンな形を選ぶ。

青いベッドカバーとグラス、黄色いクッションをリンクさせて。
ランプやグラスなどの小物はフェミニンさを与える、丸みのあるフォルムを。

これらの基礎知識をかりんに伝えながら「言葉にしてこなかった、大切なルールや方法論がまだまだあったなぁ」と気がつきました。

これから始まる連載は、家づくり、部屋づくりにおける「レシピ本」のようなものです。だれか(できれば私であってほしい、笑)のアドバイスに従って材料を集めて調理すれば、それなりに美味しいパスタやハンバーグが出来上がるように、ある一定のアドバイスに従えば、それなりに心地よい空間ができあがります。もちろん食べたいものが人それぞれ違うように、どんな部屋にしたいかというのは一人一人違います。でもどんな部屋にするにしても、一定のプロセスやルールというのは、同じなのです。みなさまが「模様替えしたい」「リノベしたいな」と思ったときに、いつでも開けるレシピ本のようなものを、こちらの連載で続けていけたらな、と思っています。

[after]一枚の絵から完成した部屋。イエローとブルーをテーマカラーとしてリンクさせて、長女の希望通りの落ち着いた、居心地のいい雰囲気になりました。

納得のいく家づくり・部屋づくりのための 
〈 HOMEWORK 〉

以下の項目をノートやスマホのメモ帳などに書き出してみましょう。

□ 今の家や自分の部屋の空間はどんな場所ですか? 写真にとって客観的に見てみましょう

□ 好きなインテリア雑誌やインテリア本はありますか?

□ あなたが好きな色は? 5色まで書き出してみましょう
 

写真・文/行正り香