完璧な親ではなくても、守りたいルール。気をつけていること


——ゆりあは幼い頃から“おっさん”というあだ名をつけられるくらい男勝りな女性ですが、菅野さんにもそんな一面がありますか?

菅野:ゆりあさんは大事な場面で決してラクな選択を選ばないんですよね。その覚悟や、メンタルの強さに、私は到底及ばない気がします。私は子どもが2人いるのですが、普段は子育てでままならないことが多くて、すぐに文句を言ったり、くさくさしてしまうので。ゆりあさんの凛々しさが羨ましいです。

菅野美穂「人生の縁の糸を自分から切らないほうがいい」とことん時間を費やせない時期こそ目の前の仕事を大切に_img0

 

——家庭で完璧な親を演じるのは難しいと思います。それでもお子さんの前で“かっこいい母親”でいるために心がけていることはありますか?

菅野:何があっても「大丈夫だよ」って励ましてあげられるような母親になりたいと思いつつ、実際は、すぐに子どもの前で取り乱すし……。でも、私の中で「約束は守る」というルールがあって、親の都合や気分で子どもとの約束を破らないようにしています。例えば帰り道に何かを買う約束をしていて、急に雨が降ったら、面倒臭いから寄り道せずに早く帰りたいじゃないですか(笑)。でも、そこは気合いを入れて約束を果たします。きっと子どもって、守られた約束はすぐに忘れてしまうと思うけど、守ってくれなかった約束は残ってしまうと思うから。

菅野美穂「人生の縁の糸を自分から切らないほうがいい」とことん時間を費やせない時期こそ目の前の仕事を大切に_img1

 

——子育てで取り乱してしまった場合は、どうやって気持ちを切り替えますか?

菅野:怒ることが親の仕事である場面もありますし、感情的になっている瞬間は気持ちを切り替えるのが難しいですよね。親が取り乱す姿を見せることが、子どもにとって人間を学ぶ機会になるかもしれないし……と、開き直ったりして。気をつけているのは、怒ってしまう時でも、理由を説明することです。「今は出かける準備中だから遊べないよ」とか、かくかくしかじか。頭ごなしにダメと言うのではなく、理由を添えて納得してもらうことを大切にしています。

 

——最近、菅野さんは旅番組の『アナザースカイ』にも出演されていましたし、今回は連ドラの主演ですし、少しずつ仕事に費やせる時間が増えているのではないかと思います。それでも家事や育児との両立は簡単ではないはずですが、以前と比べて仕事の取り組み方に変化はありますか?

菅野:まさしく、かつてに比べて絶対的に時間が限られていて、やっと集中してドラマの台本に向き合えると思ったら、子どもが体調を崩す、みたいなことがあるので、なかなか理想通りにはいかないものですよね。だから、とことん仕事に時間を費やすことができない不安は、常にあります。それでも、以前よりも抱えられる仕事の量が少なくなったからこそ、目の前の仕事を大切にしたいと思っていますし、限られた時間で深く集中できていると思い込んでいます(笑)。今回のドラマはかなり前から原作を読み込ませていただきましたし、バレエや刺繍の教室に通う時間もあり、コツコツと役作りすることができました。そういう環境を作ってくださった関係者の方々のおかげです。

——女性の生き方はどんどん多様化していて、それこそ『ゆりあ先生の赤い糸』のような作品に刺激を受けて視野が広がる人も多いと思います。菅野さんは、最近、身の回りでアップデートしたいモノゴトはありますか?

菅野:実は先日、親しい友人が“インスタライブ”なるものをすると言っていたので、チェックしてみようと思ったら、視聴する方法が分からなかったんですよ……。そこはアップデートしたいと思っています(笑)。

——失礼かもしれませんが、菅野さんが現代的なツールに疎いことは、そこまで意外ではありません。

菅野:いや〜、本当に、私はTikTokも見たことがないんですけど、きっとそれって少数派ですよね。私はYahoo!の検索に頼って生きているのですが、それこそ『アナザースカイ』でロンドンに行ったら、現地でYahoo!が使えなかったんですよ(2022年4月6日 よりYahoo! JAPANは欧州経済領域およびイギリスから利用できなくなった)。あれは危機を感じました。もっと最新のツールを使いこなせるようになっておかないと、生きていけなくなっちゃいそう。

——SNSを使って自分で発信することに興味はありませんか?

菅野:SNSで発信するためには、演技とは違ったクリエイティブなセンスが必要だと思っていて、私が今からそこを鍛えるのは手遅れな気がしていて。このまま旧人類として生きていくのだと思います(笑)。いや、刺繍やバレエと同じように、年齢を言い訳に挑戦することを諦めるのはもったいないですね。まずは、友人のライブ配信をちゃんと見れるようになることから始めます!
 

 
 

<INFORMATION>
ドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』

2023年10月19日スタート
【毎週木曜】よる9:00~
※初回は拡大スペシャル

菅野美穂「人生の縁の糸を自分から切らないほうがいい」とことん時間を費やせない時期こそ目の前の仕事を大切に_img4

 

今年の「第27回手塚治虫文化賞」で頂点となる「マンガ大賞」に輝いた入江喜和氏の『ゆりあ先生の赤い糸』を実写ドラマ化。売れない小説家・伊沢吾良(田中哲司)と結婚した後、自宅で刺繍教室を開きながら、“穏やかな幸せ”を味わってきた平凡な主婦・伊沢ゆりあ(菅野美穂)。ある日、吾良がホテルで倒れ、緊急搬送される。しかも…ゆりあが慌てて病院に駆けつけると、そこにはさめざめと泣く見ず知らずの美青年・箭内稟久(鈴鹿央士)の姿が……。テレビ朝日系にて10月19日より毎週木曜21:00放送スタート。

【お問い合わせ先】
ルック ブティック事業部 tel. 03-6439-1647
ジョージ ジェンセン ジャパン tel. 0120-637-146
メゾン イエナ tel. 03-5731-8841


撮影/榊原裕一
取材・文/浅原聡
構成/坂口彩
 

菅野美穂「人生の縁の糸を自分から切らないほうがいい」とことん時間を費やせない時期こそ目の前の仕事を大切に_img5