小さな街のカフェを東マレーシア初のファンカフェに。ARMYにとって、小さな革命だったと思っています
アンドレア・チャン(マレーシア/オーストラリア・スウィンバーン工科大学講師)
「BTSのファンカフェを開くイベントをやりたい」。友だちがわたしの兄が経営するカフェにこんな提案をしたのは、2019年のことでした。カフェがある場所は、東マレーシア・サラワク地区の小さな街。首都クアラルンプールでは、以前からセンイルカフェをはじめとするイベントがファンによって開催されていましたが、サワラク地区では初めての試みでした。私がBTSファンだと知っている兄と母に「あなたが中心になって」と頼まれて、ARMYと一緒に企画やプロモーションに参加しました。
初めてなので、はたしてどれぐらいの人がくるのか想像がつきませんでした。でもオープン前から店の外に行列ができていて、わたしはドリンクのオーダーを取っていたのですが息をつく暇もなく(笑)。東マレーシア中からARMYがやってきました。ファンがカバーダンスをして、すごく盛り上がりましたね。違う学校に通う子たちが集まって、このイベントのためにカバーダンスの練習をしたそうです。マレーシアの小さな町に住む人たちは穏やかであまりダンスを人前で踊ったりしないのに、間違えても堂々としていてすごく楽しそうでした。兄は一体何が起きているのか、理解できないようでしたが(笑)、母はARMYがとても協力的だったので喜び、いまではすっかりARMYになりました。
残念ながら兄はいまカフェを閉めてしまいましたが、ファンカフェやファンイベントは、マレーシアのあちこちに広がっています。ファンたちが推しの誕生日を祝うために出稿する「センイル広告」もマレーシアで新しい概念ですが、近年は広告代理店も慣れていてファンの要望に応えるようになりました。マレーシアのアーティストにはこうしたカルチャーはないので、韓国から入ってきたものですね。
あの日のファンカフェは、ポジティブなエネルギーであふれていました。小さな街のカフェとARMYにとって、小さな革命だったと思っています。今回の学会で出会ったベトナムの参加者からカフェのやり方について質問を受けたので、ノウハウをシェアしたいと思います。また、マレーシアのファンに対するリサーチを深め、ファンベースの可能性について研究を続けたいと思います。
(10月17日配信の後編では、インドとブラジルのARMYにインタビュー!)
文・撮影/桑畑優香
構成/露木桃子
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