おすすめ本❷
若松英輔『悲しみの秘儀』

邪念に塗れた心がすっと軽くなる「心の清め塩」

批評家・随筆家として活躍する著者が、宮沢賢治、須賀敦子、プラトン、ユングなどの死者、哀しみ、孤独について書かれた文章を読み解きながら、人間の絶望と癒しを見出していく26篇。若松英輔著『悲しみの秘儀』(文春文庫)

「息子の習い事の待ち時間、暇つぶしにスマホでオンラインショップをのぞいていました。そのうちに『うわ~、このバッグ欲しいわあ。でも、本当に高いわあ。でも欲しいなあ』と煩悩? 邪念?にいっぱいに(笑)。そんなとき、すっとバッグの中から『悲しみの秘儀』を取り出し、一篇読んでみる。すると、すーっとその気持ちがなくなっていくんですよ。まさにこの本は私にとっては”心の清め塩”です。

文庫版には26篇が収められていて、ちょっと空いた時間に読むにもちょうどいい長さ。読むたびに『最近ずるい考えをしていないか』とか『気づかないうちに誰かを傷つけていないか』と問いかけて、自分の中の正しさを見つめ直すきっかけをくれます。

読んだときの感覚というか手触りは、ジャンルは違いますが、茨木のり子さんの詩集『自分の感受性くらい』にどこか似ていて。エッセイと言っていいのか哲学書といっていいのか何ともいえない不思議な本ですが、私はとっても好きなんです」
 

 

おすすめ本❸
小川洋子『人質の朗読会』
ひとことで言い表せない不思議な世界に惹かれる

人生のささやかな一場面を9人の人質がそれぞれ朗読していくーー。作家・小川洋子ならではの小説世界が、しみじみと深く胸を打つ作品。小川洋子著『人質の朗読会』(中公文庫)

「小川洋子さんの作品が大好きです。10年以上前に『妊娠カレンダー』を読んで以来、小川さんが作り出す、何とも表現しがたい世界に魅了されているひとりです。比喩表現の美しさや、物語の設定も素晴らしいのですが、端的にこんな話と説明できないところにとても惹かれます。

今回紹介する1冊は、タイトルやその設定にドキッとしますが、綴られる全9篇は、表現の美しさ、その文章から感じる空気感は、まさに珠玉という言葉がぴったり。物語を読んでいるようで、その文章から伝わってくる空気感を味わっている。そういう楽しみ方ができる本が好きですし、自分自身が書くときも、そんな本が書けたらいいなあという思いで書いています」

「皆さん、お気づきでしょうか。今日の私、誰かに似てませんか? そうです、又吉さんです(笑)。スタイリストの亀ちゃん(亀甲有希さん)が、紹介する本のリストに又吉さんの作品があったからと、スタイリングしてくれたんです!」

「今回ご紹介した3冊は、物語の展開や語られることの面白さを味わう以上に、その文章表現、そして醸し出す空気感が大好きで、皆さんにも味わって欲しいなと思って選びました。

前回の絵本と今回の本は、そっと心に寄り添うような心にしみるような、作品を選びましたが、次回の映画はだいぶ変わって、私の大好きなホラーを中心に好きな映画を紹介しますね。実は、“ホラー”は私が結婚するきっかけでもあるんです。そんなちょっぴりきゅんとする(笑)!? エピソードもまじえながら! お楽しみに」


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撮影/森脇裕介
スタイリング/亀甲有希
ヘア&メイク/吉岡美幸
構成・文/幸山梨奈


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