お笑いの謎に東大の研究者が迫る異色の本


「お笑いや漫才には再現性があるのか」「芸人が生み出す『お笑い』の面白さの秘密とは何か」をテーマにした本『最強の漫才 東大と吉本が本気で「お笑いの謎」に迫ってみた!!』(講談社)が出版されました。この本では東大の研究者が、「つかみ」と「本ネタ」の関係、M-1グランプリの王者は予測できるか?などについてデータを用いて分析。さらに、NON STYLE石田明、ゆにばーす、マヂカルラブリー野田クリスタル、トータルテンボス、笑い飯哲夫、オズワルドといった錚々たるお笑い芸人たちのお笑い論のインタビューがボリューミーに展開されています。


あえて“階段を2歩下りる”がウケるための秘訣?


プロの芸人さんがお笑いについて真剣に語るインタビューは読みごたえたっぷり。ネタ作りへの姿勢や、お笑いとルッキズムというホットな話題についても語られています。そんな濃厚な芸人さんのインタビューの中でも印象に残ったのが、「お笑い=ベタが最強」という真実。お笑いはいかに意表を突くかや、オリジナリティーを出すかより、「誰もが理解できること」が大事なのだと言います。例えば笑い飯の哲夫さんは、「階段を2歩下りる」ことが大事だと説きます。自分が思う「面白い」を貫くのではなく、説明を入れたりして伝わることを意識してみることが大事なんだとか。お笑いは高度過ぎても、面白すぎても笑えない、というのです。意外なことに、自分の面白いと思うものを一回捨て、”ちょっとだけおもろないネタ”を作ってみたらオーディションに受かりだしたそうです。

 

NON STYLEの石田明さんも、“ベタこそが最強”だと力強く言います。「僕らがほんまに面白いことって、お客さんって笑わないんですよ。だから、面白い芸人ほどラインを下げているわけです」。さらに、「アホが才能」だと言う石田さん。石田さんは勉強が得意ではなく、知識の量は人より少ないけれど、その「知識のなさが僕の中では自分の才能」なのだと言います。笑いは万人にネタの前提が理解されることが重要だけど、頭がいい人は常識の基準が高く、世間一般の感覚が分からない。一方頭がよくない人が分かることは大体みんなも分かる。知識がないからこそ、小中高生でもわかる簡単な設定や言葉でベタな笑いをとることができる、と言うのです。