「お笑いは動画で観るもの」で失われる舞台独特のエネルギーとのふれあい
そしてマヂカルラブリーの野田クリスタルさんは、「型が決まったお笑いよりは余白があるほうが楽しいと思う」「そもそも完成されているとか完璧であることって難しいところがあると思うんです」と、完璧さや隙のなさではなく、”余白”こそが重要だと語ります。作りこみ過ぎた笑いより、観客と作り上げていく笑いのほうが楽しい、というのです。
この3者のインタビューからも分かるように、作りこまれた高度な笑いがウケるとは限らないのがお笑いなんですね。あえてレベルを下げることでみんなが笑えるというポイントは興味深いです。
また、「お笑いは生ものである」というのも、芸人さんのインタビューを読んで感じたことです。この本のテーマのひとつは、「お笑いに再現性はあるか」です。AIが台頭する中で、お笑いの要素を科学的に分析できれば、ノウハウやメソッドを生み出し、一般人でもプロの笑いを再現できるのではないか?という仮説のもと、検証が行われます。この問いに対し、NON STYLEの石田明さんは「お客さんは毎回替わりますし、ある劇場でウケたネタが別の場所でもウケるとは限らないですし、その意味では『笑いは再現できない』です」ときっぱり。
また、お笑いをYouTube等の動画で観ることが一般的になった今の時代を次のように分析します。「今の若い人たちからしたら、漫才は映像系、動画系のカテゴリーなんですよ。僕らは漫才といえば寄席とか演芸ですが、今の時代は漫才が『面白い動画のひとつ』になってしまっている」。石田さん曰く、舞台には独特のエネルギーが流れているのだそう。「昔の漫才師はバコバコエネルギーが飛んできたんですよ」「エネルギーはお客さんと作るもの」。漫才の舞台で飛び交う動画では見えないエネルギーのうねりが強いネタほど面白いのだと言います。
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