『いちばんすきな花』(フジテレビ系・毎週木曜22時〜)公式サイトより。

二人組を求める人生で出会った、4人のひとりたち––––––。

現在放送中のドラマ『いちばんすきな花』(フジテレビ系)は、4人の男女による“友情”を描いた物語。昨年、社会現象となった『silent』(フジテレビ系)の脚本家・生方美久さんと、村瀬健プロデューサーが再タッグを組むとあり、放送前から注目を集めていました。

本稿では、“この秋の最高作候補”として名前が挙がることが多い『いちばんすきな花』を、じっくりレビューしていきます。

 

『silent』の“陽キャムーブ”が刺さらなかった人にこそ刺さる?


『silent』のヒロイン・青羽紬(川口春奈)は、圧倒的な一軍ヒロインでした。しかも、男女両モテタイプの。だからか、悪気のない陽キャムーブがすごかったんですよね。もちろん、無自覚なんですけど。他人に拒まれた経験が少ないから、自己肯定感がMAXのまま大人になった……という感じで。

もうね、紬みたいな女の子には敵わんのですよ。媚びなくていい。ただ、ナチュラルに生きているだけで、自然とまわりに大事にされちゃう。そもそも、佐倉想(目黒蓮)と付き合った瞬間に、学校中が失恋パンデミックを起こしたってどんなモテ方や……! そんなマドンナって漫画のなかの話だと思っていたけれど、川口春奈さんのビジュアルと雰囲気なら、納得です。

あるインタビューでプロデューサーの村瀬さんが、紬と想のことを「俺も紬のこと好きだったのに……じゃなくて、俺はこの2人の友達ってことを自慢できるだけでいいや、みたいな気持ちになるレベルの美男美女なんです(笑)」とおっしゃっていましたが、本当にそんな感じでしたよね。なんて言うんだろう、“手を引かざるを得ない”というか。

その一方で、『いちばんすきな花』の4人は、紬や想とは対照的な青春時代を歩んできました。当たり前にみんなに好かれてきた紬と、みんなに好かれるように頑張っても、ひとりぼっちになってしまう潮ゆくえ(多部未華子)は、同じクラスにいてもきっと仲良くなっていない。おそらくゆくえは、キラキラしている紬と想を「すごいなぁ」なんて見つめながら、その横でちょっぴり切なそうな顔をしている戸川湊斗(鈴鹿央士)に想いを馳せていたんじゃないかな。「戸川くんは、寂しくないのかな?」って。

『silent』で、湊斗や桃野奈々(夏帆)に感情移入して、「ううう……苦しい」となっていた人にこそ、『いちばんすきな花』は刺さる作品だと思います。