日常で感じる「ちょっとした違和感」について井戸端会議していくこの連載。ウェブマガジン「ミモレ」とその読者コミュニティ〔ミモレ編集室〕に寄せられた皆さんのモヤモヤエピソードをご紹介していきます。

今日ご紹介するのは、「推し活動」にまつわるモヤモヤエピソードです。

 

「推し、いないの?」


エピソードをお寄せくださったのは、主婦歴20年だというアリサさん(45歳・主婦)。


大学を卒業して以来、ずっと専業主婦で生きてきました。子どもはいませんが、夫との二人暮らしはそれなりに幸せ。あまり社交的な方ではなく、家事を丁寧にするのが好きなので、毎日そこそこ充実しているつもりです。

最近、大学時代の友人たちと集まる機会がありました。3人の子育て中だという人、仕事をバリバリと続けている人……みんなとても忙しそうで、圧倒されてしまった私。とはいえそれ自体はよくあることで、「私は私」と自分に言い聞かせておとなしく座っていました。

今回ちょっと驚いたのは、みんな「推し」がいること。K-POPアイドル、ドラマ出演で話題の俳優、ラジオパーソナリティ。「最近の私の推しはね…」と誰かが話し始めると、「私も!」「私の推しはね~」と大盛り上がり。もちろん「推し」という言葉は知っていましたが、自分の身近で聞いたのは初めてでした。

「アリサは推し、いないの?」

当然私も聞かれましたが、何事も薄く広く派の私には推しはいません。空気を壊したくなくて、「さっき言ってたラジオのAさん、結構好きかも」と調子を合わせると、友人は「Aさん、いいよね!」と目をキラキラさせ、更に熱を入れてAさんの魅力を語り続けます。場を盛り下げずに済んだとホッとしつつ、ちょっと疎外感を感じてしまいました。

帰宅してから、教えてもらった友人たちのSNSアカウントを見ると(普段はほとんどSNSは見ません)たくさんのキラキラした投稿が。無趣味で推しのいない、友人も少ない私はなんだかとても小さな世界に生きているつまらない人間みたい。推しがいる人が羨ましいです。

 


「日々の暮らしを楽しめる」は強い

 

「推し活動」ブーム、盛り上がっていますよね。芸能人などの熱烈なファンが、追っかけしたりファン同士で交流したり。推しがいる人達の熱量高い様子を見ていると、そんなに情熱を注げる相手がいること自体が羨ましくなってしまう気持ちも分かります。

しかし、「推し」がいる・いないに当然優劣はありません。いない人は、推しを必要としていないだけではないでしょうか。

推し活トークで盛り上がる人たちと一緒にいると、「充実しているみんなと比べて自分って……」と劣等感のようなものを持ってしまうのかもしれません。でも、推しや仕事、子どもなどの「何か」がなくても日々の暮らしを楽しめているというアリサさんは、実はとても強い人だと思います。

 
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