「増税メガネ」はマナー違反か、許容の範疇か?岸田首相への揶揄から日本の民主主義を考える_img0
写真:AP/アフロ

岸田文雄首相に対して「増税メガネ」というニックネームがついていることについて、時代に反する「ルッキズムではないか」との指摘が一部から出ています。政治家の身体的な特徴を揶揄することについて、どう考えれば良いのでしょうか。

岸田氏は、政界きっての眼鏡好きと言われ、同じフレームを色違いで揃えるなど、眼鏡がトレードマークとなっています。外務大臣だった2015年には「第28回 日本メガネベストドレッサー賞」の政界部門を受賞したこともあり、本人も強く意識していると思われます。

 

ところが、岸田政権が増税を画策しているのではないかとの話が大きくなるにつれて、「増税メガネ」というニックネームが飛び交うようになりました。永田町では解散総選挙が近いと噂されていますが、揶揄はさらにエスカレートし、日本維新の会の立候補予定者が「増税メガネ」という言葉を使ったチラシを配布していたことが発覚し、問題になるという出来事も起こっています。

相変わらずネットなどでは「増税メガネ」という言葉が飛び交っていますが、一方で身体的特徴を揶揄することは、典型的なルッキズムでありマナー違反であるとの声も出ています。

確かに他人の身体的特徴を揶揄することがマナー違反であることは言うまでもありません。一方で、政治家という権力者に対し、一定程度の揶揄が行われることは許容すべきであるという考え方も、民主主義の価値観の一つであり、この判断は難しいところです。

政治家を揶揄したり風刺することの是非については興味深い経験則があります。

民主化の度合いが高い国は、政治家に対する揶揄が社会的に許容されていますが、強権的な国の場合、揶揄する行為は侮蔑であるとみなされ、場合によっては行為そのものが処罰対象となります(日本の隣国では、トップを動物に例える表現は検閲の対象となっています)。一方で、民主化の度合いが高い国ほど揶揄や風刺が流行らないと言われます。政治家に対する揶揄や風刺画が大量に流布するのは、たいていの場合、権力による圧政が行われる国なのです。

 
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