猫と一緒に暮らす人にとっては、家族のように大事にしている猫と1日でも長く暮らせるのは幸せなことです。その一方で、猫も飼い主も年齢を重ねていくことになります。
それでも、猫とともに暮らしてきた時間はかけがえのないものですし、シニアになった猫だからこそ、愛着もひとしおです。そこでミモレでは、シニア猫(ここでは10歳以上と定義)と暮らす人たちのお話に耳を傾けてみようと思っています。
Webデザイナーのえりかさんは、3匹の猫と暮らしています。いずれの猫も、元パートナーが偶然、路上で保護したもの。14歳のひなちんは、交通事故に遭って怪我をしていた状態でした。縁あってともに暮らすようになった猫たち。昨年、パートナーと別れ、3匹の“シングルマザー”となったえりかさんは、日々、猫に生かされていると実感しています。
えりかさん(40代)Webデザイナーで、現在は週3日出社、それ以外は在宅で仕事をしている。2008年にペット可の物件に引っ越したのがきっかけで、当時10歳だった実家の猫・のんと暮らし始める。その後、当時のパートナーがひな、ブン、こげを保護。一時期は近所の子猫を保護して10匹近くいたことも。今は、みんなが健康で快適に暮らすことをテーマに新生活を構築中。
ひな(14)麦わら柄のメス猫。交通事故に遭って怪我しているところを当時のパートナーが見つけて病院に連れて行く。後ろ足を切断して3本足になるものの、無事に回復。ものすごい怖がりで変化が苦手。同居猫のブンとこげのことも苦手で、近づくと威嚇する。「おはよ」と「ごはん」が言える、かしこい猫。
ブン(6)キジ白柄のオス猫。寒い季節に、公園のベンチでうずくまっていたところを当時のパートナーが見つけて保護。はじめに連れて行った病院のカルテに「かわいい」と書かれるほど、活発で甘えん坊。家を守っているのは自分という意識がある様子。
こげ(4)シャム柄のオス猫。寒い時期に、道路にうずくまっていたところを当時のパートナーが見つけて保護。やんちゃでいたずらっ子な末っ子気質。甘えたい時に大声で鳴く。ブンとはよく喧嘩したり、追いかけっこしたりして、「トムとジェリー」みたい。それでもブンとは仲良し。
のん(19歳没)パステル三毛柄のメス猫。もとは実家の猫。実家で他の猫との折り合いが悪くなってしまい、10歳の時、えりかさんがペット可の物件に引っ越したタイミングで一緒に暮らし始める。かしこくて気が強く、気高い女王気質の猫。2018年夏、老衰で天寿を全うする。
私の猫との暮らしは、15年前から始まりました。実家で猫を飼っていたのですが、他の猫と折り合いが悪かったのんさんを連れてきたのがはじまりです。気が強い女王様気質だったので、実家にいるより、一匹でチヤホヤされるほうがいいんじゃないかと思ったからです。この時、のんさんは10歳でした。
その翌年のお盆の頃、友達と飲みに行っていた時に当時のパートナーから電話がかかってきました。事故に遭って怪我をしている子猫を見つけたから助けたいというのです。この猫がひなちんです。どんな状態かわからないし、怪我をしているから、保護してもつらい結果になるかもしれないと思ったのですが、それでも助けたいというので、慌てて家に帰りました。段ボールやタオル、手袋などを持参してなんとか子猫を保護し、夜間対応をしている動物病院にタクシーで連れて行ったんです。
左後ろ足にひどい怪我をしていて、獣医師には「膝から上を残すこともできるけど、足の根本から切断したほうがいい」と言われ、そのようにしました。手術は成功したのですが、約1ヶ月入院。私とパートナーはお互い仕事の合間に見舞いに行きました。愛嬌があって病院でも人気者になり、馴染みの看護師さんにゴロゴロ鳴きすぎて、「心音が聞こえません」と言われるほどでした。そのあとすっかり変化が苦手になり、病院嫌いになってしまうのですが……。
退院して家に連れて帰ると、のんさんは子猫のひなのことが好きじゃなかったようですが、心配だったのか、見守ってくれてはいました。ひなちんは3本足ではありましたが、よく走り回るし、キャットタワーにも登るし、日常生活に支障はありませんでした。
ブンがうちに来たのは6年前のこと。寒い時期に、パートナーが公園のベンチでうずくまっていたのを見つけて保護しました。活発で甘えん坊の子猫でしたが、のんさん、ひなちんと仲が良かったとは言い難いです。のんさんは子猫が好きじゃないし、ひなちんは人見知りだったからです。ブンは遊びのつもりで、キャットタワーの上で寝ているひなちんにちょっかいをかけるのですが、ひなちんは3本足なのでさっと逃げられないし、受け身も取れないので落ちてしまうこともあり、目が離せませんでした。
保護直後(左)と、すっかり家に馴染んだ頃のブン
のんさんとは9年間一緒に暮らしたのですが、2018年の夏に亡くなりました。亡くなる2日前までトイレに行っていたし、ご飯も食べていましたが、キッチンの隅に行くようになり、そこに猫ベッドをおいてやりました。
ある日、仕事帰りにのんさんが好きな本マグロの刺身を買いました。帰宅してキッチンに向かうと、猫ベッドの前にひなちんがいて、私の顔を見て「あっ」というような表情をしました。のんさんは既に亡くなっていたのです。死に目には会えませんでしたが、ひなちんがそばにいてくれたし、のんさんもその瞬間をあまり見られたくなかったんじゃないかなと思っています。ひなちんは私の顔と、のんさんの姿を交互に見ていたので、私が悲しむのもわかっていたのだと思います。
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