猫と一緒に暮らす人にとっては、家族のように大事にしている猫と1日でも長く暮らせるのは幸せなことです。その一方で、猫も飼い主も年齢を重ねていくことになります。
それでも、猫とともに暮らしてきた時間はかけがえのないものですし、シニアになった猫だからこそ、愛着もひとしおです。そこでミモレでは、シニア猫(ここでは10歳以上と定義)と暮らす人たちのお話に耳を傾けてみようと思っています。
大学病院で研究に携わるふじこさんは、実家にはずっと犬がいたものの、猫とは無縁の生活を送っていました。親しい友人はみな猫を飼っていて、たまたまみんなで立ち寄った繁華街のペットショップで視線を感じて見上げてみると、そこにアメリカンカールのオス猫がいました。まだ生後6ヶ月でしたが、ペットショップでは売れ残り状態。紆余曲折あって、ふじこさんが家に迎え入れることになりました。翌年には保護猫のメス猫も加わり、今は2匹とも10歳超えの立派なシニア猫となりました。
ふじこさん(50代)製薬会社での勤務を経て、現在はiPS細胞を用いた基礎研究に関わっている。14年前に繁華街で売れ残っていたアメリカンカールのフトシと出会う。フトシに友達をと思い1年後に保護猫の譲渡会で出会ったケリーを迎え入れる。今は働き方を見直して在宅時間が増えたため、日々、1人と2匹の生活を満喫している。
フトシ(14)アメリカンカールのオス猫。茶色い長毛種。人懐っこい性格で、荷物の配達に来た人にも愛想がいい。暑い夏はサマーカットが定番。幼い頃からいくつもの大病を乗り越えてきた。名前の由来は、「ミッシェル・ガン・エレファント」のギタリスト・アベフトシから。
ケリー(13)頭部がセンター分けのキジ白メス猫。房総半島で保護され、ふじこさん宅の近所で開催された保護猫の譲渡会で出会う。一時期9kgまで大きくなってしまったが、6.2kgまでダイエットに成功。甘えん坊だけど、人が来ると隠れてしまう。ただし、ある友人だけには魂を売り渡して心を開いている。
「犬か猫か?」と聞かれると、実家でずっと犬を飼っていたこともあって犬派でした。そもそも仕事が忙しすぎましたし、面倒を見る自信がなかったため、ペットを飼うなんて考えられませんでした。でも、仲のいい友達はみんな、猫を多頭飼いしていました。
14年前のある日、友達と3人で都心の繁華街に行った時、ペットショップに立ち寄りました。友達2人は保護猫を飼っていましたが、猫好きの性で気になってつい入ってしまったのです。私が豆柴の子犬を見ていたところ、上から視線を感じました。見上げると、少し大きくなった猫がじーっと私を見ていたのです。その子のケージには「Sale」という文字。アメリカンカールのオス猫で、フクロウみたいな感じで、目つきが鋭かったのが印象的でした。そのあと、店を出て飲みに行ったのですが、話題はあの猫のことばかり。どこかで心に引っかかっていました。
しばらくして、同じメンバーで秩父に1泊の温泉旅行に行ったのですが、そこでも「あの猫売れたかな?」と話していました。だんだん気になり始めて、2日目の観光もそこそこに、みんなでもう一度あのペットショップに行ったんです。すると、その猫はいなくなっていました。念のため店員さんに聞いてみたら、「今、名古屋のペット博に行ってます。あそこに行けば、ほとんどの子に飼い主さんが見つかるんですよ」とのこと。それならと安堵したのですが、やっぱり気になるので、「もし戻ってきたら連絡をください」と伝えておきました。
すると数日後、まさかの「帰ってきましたよ」という連絡が! また3人で駆けつけました。「Sale」といってもそこはペットショップ、値段を聞くと20数万円。「この子は売れなかったらどうなるんですか?」「みなさんが心配するようなことにはなりません!」といった店員さんとのやりとりが続いた後、私が迎え入れる決意をしました。値切り交渉をして14万円くらいまで値下げした上に、友達の援護射撃もあってキャリーバッグや猫トイレなどもつけてもらいました。私はATMに駆け込んでお金を下ろし、タクシーで連れて帰ったのです。
うちに着いた直後はずっと椅子の下に隠れていたフトシ。友達が帰ったら安心したのか出てきてくれ、さらには元来の人懐っこさから夜はゴロゴロと喉を鳴らしながらベッドの上まで来てくれたんです! でも、猫を飼うのが初めてだった私は、そのゴロゴロ音の大きさに驚いて眠れず、フトシを寝室から出してドアを閉めてしまいました。本当にごめんなさい!! もちろんそんなことをしたのは当日だけで、あとは一緒に寝ています。
当時の私は仕事が忙しく、出張も多かったので、フトシに留守番させてばかり。1匹では寂しいだろうと、もう1匹迎え入れることにしました。またもや友達と譲渡会に足を運んでみたところ、ケージにたくさんの猫がいて驚きました。みんなかわいいし、そう簡単に命を選べない……と思っていたところ、あるスタッフが「抱いてみますか?」と生後約3ヶ月のメスの子猫を見せてくれました。私の胸に、小さい体をぴったりとつけて身を委ねてくれた時に、私の心もぎゅーっとつかまれて、この子に決めました。それがいま13歳のケリーです。
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