──老犬や老猫のエピソードも印象的でした。たまさんの「かわいい」という気持ちがすごく伝わってくると言いますか……。
すごくフェチな話ですが、年を取った犬猫が大好きなんです。「後先短くて可哀想……」なんて気持ちは一切なく、ただ単に「うわ可愛い」って思って引き取っているんです。
子猫子犬は「毎日が運動会」で世話をするのが大変なんですが、歳をとった子はのんびり穏やかなんですよね。うちにいるおじいちゃんの芝犬とか、草むらに入ると動けなくなるんですが、出してあげても3歩歩いたらまた草むらに引っかかったりして……。そのポケっとした可愛さに、いつも笑顔をもらいます。動物はたとえ子供でも突然死んでしまうこともあるので、介護できることも、ボケた姿を見られることも私にとっては幸せなことなんですよね。
──一方で、たまさんの愛情を見ると「動物を飼ってみたいな」と思っている人が、「ちょっとここまでは……」って思ってしまいそうな気もします。
私のように、噛まれても引っ掻かれても……という変態を見ると「そりゃあなたは飼える人だよね」と思われがちなんです。でも、そうではない里親さんも普通に飼っています。SNSなどを通じてそういうのを知ってもらえれば、「自分も飼えるかな」と感じてもらえると思います。
それに、動物を飼う時に「愛」って一番最後でいいと思っています。
──「愛が最初」ではなく?
「動物を飼う覚悟」って、実は物理的な問題なんですよ。
例えばマラソンを走るとして、なんの準備もせずいきなりスタートしても走りきることなんてできないじゃないですか。軽くていい靴を選ぶとか、体力をつけるとか、まずはそういうところですよね。
動物を飼うのもそれと同じで、引き取ってから看取ることまで考えて、物理的に準備する。金銭面、時間的、体力的な余裕というような、すごくシンプルな問題だと。飼いきれない人の多くは、そのあたりの準備不足なんだと思います。病気になるとか、自分が先に死ぬとか、世話がそこまで大変だとかも想定できていないんですよね。
──とはいえ、一緒に暮らす前に、そういう部分のリアルを認識するのはなかなか……。
実際のところ、難しいです。「野良猫だから噛みます」という想定はできるでしょうが、「人懐っこいですよ」と言われて預かった子が噛んでくることもあるし、病弱がちだった子が体力がついた途端にすごい勢いで噛んでくることもあるし。
要するに、全てを想定するのは無理で、想定外のことが起こった時にどれだけ対処できるか、が大事なんです。「犬を飼うことについて全て勉強したから安心」なわけではなく、飼いながら考えていく。例えば動物が噛むのは、すごくストレスを貯めている証拠だから、じゃあ何がストレスなのか、どんな生活なら噛まないでいられるのかを、調べたりドッグトレーナーさんに教えてもらったりしながら、勉強して考える。
そこにお金がかかることは前提です。でも専門家に聞いたそのままをやってみてもダメなこともあります。私もこれまで何頭もお世話してきましたが、100匹いれば性格も100通りなので、その子の性格にあわせて解決をしていくことが大事です。
──人間も動物も「100人100通り」だとマッチングが上手く行かないことも当然ありますよね。
そう思います。いろんなリスクをお伝えしても、実際に飼ってみて「ここまで大変なんだ」「ちょっと手に負えないかも」と、トライアルを中断する方も結構いらっしゃいます。でも、その人たちが“飼えない人”ということではないんですよね。最近は「トライアルの中断=悪」という人もいるようですが、その子と縁がなかっただけ、他の子も見てほしいなとは思います。
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