訪問看護への過度な期待はNG。できることとできないことがある

老親の介護について「誰かがやってくれるだろう」は通用しない!?子どもが最低限するべきこととは?_img0
 

「訪問看護も24時間対応だから、三食ご飯も食べさせに来てもらえるんですよね?」と、過度な期待をしてしまったり、何かあればすべて対応してもらえるものだと誤解されている人もいます。もちろん、自宅での生活を安心して送れるようにサポートするのが私たちの仕事です。しかしそのサポートには、できることとできないことがあり、頼んだら何でもやってもらえるというわけではないことを知っておいていただけたらと思います。

 

例えば、がん終末期で認知症の沢田好子さん(仮名・81歳)。好子さんは一人暮らしで、遠方で会社員として働いている息子さんがいますが、仕事で忙しい状態でした。好子さんは、認知機能が落ちてきていることから記憶が曖昧で、すぐにいろんなことを忘れてしまいます。私が関わるようになった時点で、すでに定期的に服用しなければならない薬を、決められたとおりに飲むことが難しくなってきており、今後一人暮らしを続けることが、早々に困難になってくることが予想されました。

がん終末期では、急に病状が悪化し、自宅での療養生活が難しくなってきたときに備え、あらかじめ入院できる病院を確保しておくと安心です。主治医のいる病院でその対応ができない場合には、別の病院の緩和ケア病棟に、いざという時に入院できるための登録をしておきます。好子さんがそれまでかかっていた病院では、入院の受け入れができないことから、別の病院に登録する必要がありました。ましてや好子さんの場合、一人暮らしで認知症もある状態ですから、いざという時に備えて、できるだけ早く登録しなければならない状況でした。

こうしたことを踏まえ、一人暮らしが難しくなったときの療養場所の相談と、入院のための登録をお願いしようと、息子さんになるべく早くお会いして、お話ししたいことを伝えたのですが、息子さんは「忙しくてとても無理です」と言います。私は、訪問診療の開始の際には、なるべく早いタイミングで家族と直接お会いして相談することを大切にしていますが、息子さんの返事を受けて、やむなく電話でお話しすることになりました。ところが、差し迫った状況を息子さんに伝えるも、「すべてそちらにお任せします」「病院の登録は、時間ができたら行きますから」という返事で困ってしまいました。