自分が本当に感じていること、本当に望んでいることに正直に生きる
上野:量子力学には「世界は観測されるまで存在しない(「存在しない」は「その世界の形が確定しない」の意味)」という考え方があるそうですけど、ほんとうにそうだと思うんです。自分がこうして表に出る側だから、メディアの伝え方によって、伝わることが全然変わってしまうのって、わかるんですよね。作品を丁寧に作るのも、観客のみなさんに伝えたいことがちゃんと伝わってほしいからで。メディアを通じて発したものは、発信の仕方ひとつで全然違う形で伝わってしまうし、それを見た人はそれを鵜呑みにしたり、影響されたりして、フィルターを作ってしまう。キラキラして見えるものは、実際に自分の目で見たらキラキラしていないかも知れないし、流行1位でも自分が望むものではないかもしれない。心の中にちょっとした違和感を覚えても、一歩引いて考える余裕がなくて、ベルトコンベアに乗っているような状態で。
パリュス:今の時代、忙しすぎてそういう余裕がない人が多いのかもしれませんね。
上野:立ち止まって考えて、別の方向に進むのってエネルギーがいるし、真実がほかにあっても知ろうとしない人も多いのかもしれません。もう少し自分の心と対話して、自分が本当に感じていること、本当に望んでいることに正直に生きるほうが幸せに生きられるんじゃないかなと。良子はそういう人ーー自分が実際に見て、幸せだと感じる世界を追求している人だと思うんです。それは物質的な幸福ではありませんよね。常識って何? 他の惑星に行ったら違う常識があるかもしれない。みんなが、自分とは違うものの存在を「楽しい」「面白い」「素敵」と思えたら、もっと面白い星になっていくかもしれません。
<INFORMATION>
『隣人X -疑惑の彼女-』
12月1日(金) 新宿ピカデリー他全国公開
監督・脚本・編集:熊澤尚人
原作:パリュスあや子「隣人X」(講談社文庫)
配給:ハピネットファントム・スタジオ
ある日、日本は故郷を追われた惑星難民Xの受け入れを発表した。人間の姿をそっくりコピーして日常に紛れ込んだXがどこで暮らしているのか、誰も知らない。Xは誰なのか? 彼らの目的は何なのか? 人々は言葉にならない不安や恐怖を抱き、隣にいるかもしれないXを見つけ出そうと躍起になっている。
週刊誌記者の笹は、スクープのため正体を隠してX疑惑のある良子へ近づく。ふたりは少しずつ距離を縮めていき、やがて笹の中に本当の恋心が芽生える。しかし、良子がXかもしれないという疑いを払拭できずにいた。良子への想いと本音を打ち明けられない罪悪感、記者としての矜持に引き裂かれる笹が最後に見つけた真実とは。嘘と謎だらけのふたりの関係は予想外の展開へ……!
©️2023 映画「隣人X 疑惑の彼女」製作委員会
©️パリュスあや子/講談社
プルオーバー¥42900、スカート¥36300/ミュラー オブ ヨシオクボ(ミュラー オブ ヨシオクボ) イヤカフ¥25300、リング¥41800/リューク(リューク) シューズ¥82500/ヘリュー(ショールーム セッション)
【問い合わせ先】
ショールーム セッション tel. 03-5464-9975
ミュラー オブ ヨシオクボ tel. 03-3794-4037
リューク iofo@rieuk.com
撮影/田上浩一
ヘア&メイク/清家いずみ
スタイリスト/古田千晶
取材・文/渥美志保
構成/坂口彩
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