ご近所トラブルが悪循環を生み、ゴミ溜めを加速

ゴミを出すにしても、家の前に出すのがルールなため、ある程度、出せる時間が限られてしまいます。つまり、あまり早く出しすぎると、カラスにいたずらされたりする可能性があり、ご近所の方は大きなゴミバケツに入れて出しているのですが、収集が終わった後、そのゴミバケツは片付けなければなりません。譲さんは、どうしてもそれが面倒なのです。

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そのまま出しっぱなしにしていたら、ゴミが取り除かれて軽くなったバケツが風で倒され、かなり遠くまで転がっていってしまったこともありました。その時は、ご近所の方がバケツを譲さん宅に戻してくれましたが、大きな張り紙で「きちんと管理してください」と書かれてしまいました。

その一件以来、譲さんはゴミをそのまま出すようにしたのですが、そうするとゴミをカラスに散らかされてしまって、またご近所からクレームを受けるというマイナススパイラルに陥ってしまいました。

こうしたゴミ出しのストレスを避けることが、結果として家の中のゴミを溜めてしまうことに繋がったのです。

ここまで来てしまうと、家の中がこの先片付いていくことはなく、ただただゴミは増えるだけになってしまいます。いちばん良いのは、業者にお金を払って処分してもらうことなのですが、ゴミ屋敷にしてしまった人の大半はそれを人に知られたくないのです。そのため不衛生な状態が続いていながら、ゴールが見えないという状況に陥ってしまいます。

 

「年をとると大きな一戸建ては持て余すだけ」

そんな事態が大きく動いたのは、予想もしていなかったことからでした。
夏に気温が高くなり、ご近所から譲さん宅から悪臭がすると役所にクレームが入ったのです。一人住まいを把握していたので、福祉の人と行政が訪問。すると家の中から熱中症気味で意識が朦朧としている譲さんが出てきたのです。

すぐに救急車が呼ばれて、譲さんはレスキューされました。お嬢さん二人にも連絡がいき、結果としてゴミ屋敷が知られることになりました。

救急隊も「これ以上ゴミが増えていたら、ご本人も玄関まで出ることができず、せっかくの訪問も留守で片付けられてしまったかもしれない。強運でしたね」と逆に褒めてくれたほどです。

病院に搬送され、譲さんは有料老人ホームに入所することを決めました。

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「庭いじりが趣味ならいいが、年をとると大きな一戸建ては持て余すだけ。ゴミ出しひとつがストレスになってしまい、自分でもどうしていいのか分からなくなってしまった。本当はもっと早くに引っ越せば良かったのだが、荷物を処分しなければと考えるだけで億劫になってしまった。高齢になると、身軽になるのがいちばんだと実感した」

譲さんは、自分で家を片付けることはできないと断念。必要最小限の物だけを持ち出し、あとは全て業者に片付けてもらいました。