家賃が払えないなら、安い物件に移転する努力を
先日も50歳前後の夫婦が、家賃を滞納しているということで家主からご相談を受けました。二人の収入内で生活ができず、消費者金融からもお金を借りていました。連帯保証人になっている80歳近いお父さんが代わりに払ってこられましたが、「もう援助を続けるのは無理だ……」となり、訴訟手続きになったのです。
50歳前後の夫婦が家賃を50万円も滞納しているということは、貯金を隠しもっていたら話は別ですが、基本はお金がないということ。この年代で貯金がないというのは、本当に将来が厳しいことでしょう。
「老後2000万円問題」ではないですが、ある程度の貯金がないと、最終的には生活保護しか生きる術はなくなってしまいます。もちろん最後のライフラインですから、頑張った末に仕方がなければ胸をはって受給して欲しいとは思いますが、それまでにも家賃が払えないなら安い物件に移転する、収入を増やす、などの努力はして欲しいなと思うのです。
クリアな考えができるうちに、何をすべきかを明確に
お金に追い詰められると、視野が30センチになってしまいます。そうなると、今日の「今」のことしか考えられなくなるのも仕方がありません。それは高齢者になっても、同じことです。
だからこそクリアな考えができるうちに、しっかりと今後をどうしたいのか、そのために何をすれば良いのか、考えて欲しいのです。
高齢者向けの住宅も、いろいろな種類があります。有料老人ホームから、グループホーム、サービス付き高齢者住宅等々、たくさんあります。それらを早くから把握しておくのも良いかもしれません。実際に入所を考える時期に選んでと言われても、よく理解できないからです。
どのような種類があって、どのようなメリット・デメリットがあって、自分はどうしたいのかを考え、先に見学しておくのも悪くないと思います。そしてまずは、今住んでいる家の家賃を最後まで払い続けられるかどうか、現状を把握することをお勧めします。
著者プロフィール
太田垣章子(おおたがき・あやこ)さん
OAG司法書士法人 代表司法書士。専業主婦であった30歳のときに、乳飲み子を抱えて離婚。シングルマザーとして6年にわたる極貧生活を経て、働きながら司法書士試験に合格。これまで延べ3000件近くの家賃滞納者の明け渡し訴訟手続きを受託してきた賃貸トラブル解決のパイオニア的存在。常に現場へ足を運び、滞納者の人生の仕切り直しをサポートするなど、家主の信頼を得るだけでなく滞納者からも慕われる異色の司法書士でもある。住まいという観点から、「人生100年時代における家族に頼らないおひとりさまの終活」支援にも活動の場を広げている。著書は『2000人の大家さんを救った司法書士が教える 賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド』(日本実業出版社)、『家賃滞納という貧困』『老後に住める家がない!』『不動産大異変』(すべてポプラ新書)など。
『あなたが独りで倒れて困ること30』
著者:太田垣章子 ポプラ社 1760円(税込)
2025年には6世帯に1世帯が一人世帯に。未婚も既婚も子なしも子ありもいつかは「おひとりさま」。そんな「おひとりさま」にはどんなリスクがあるのか? 司法書士の著者が実際に見てきたケースを元に、お金、住まい、健康、家族のテーマに分け、30のリスクと対策を考える。現役世代のうちにやっておくべき準備がわかる、「1億総おひとりさま時代」をサバイブするためのヒント集。
写真/Shutterstock
構成/金澤英恵
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