みなさんこんにちは、ミモレ編集部です。

11月1日に講談社から刊行された原田マハさんの初のノワール小説集『黒い絵』。もうすでに読まれた方もいるのではないでしょうか? 

そして、実は発売にあたりミモレの読者コミュニティ〔ミモレ編集室〕にて、貴重な経験ができる取り組みをさせていただいていました。というのは、書籍発売前に配布されたプルーフ(校了前の校正刷りを簡易製本したもの)を読み、メンバーが100字のブックレビューに挑戦するということ。しかも、一部の作品は講談社が運営する文芸ニュースサイト「tree」に掲載されることになりました。

今回はメンバーのそれぞれの視点から書いたブックレビューをみなさんにご紹介いたします。まだ『黒い絵』を手に取っていない方もきっと読みたくなるはず……!

 


イタリアはアッシジの大聖堂や京都の寺社の境内etc. 場所も主人公も様々だけれど、超・描写力で、まるで自分がそこにいるかのような没入感のある作品。ドキッとする狂気が発露して、はっと現実に引き戻される。
(Minaさん)

どれも息苦しく、闇の中に存在する見てはいけない世界、一線を超えてしまった世界を覗き見ているように感じた6編の作品。中でもキアーラは芸術と小説が融合し、壁画に変えられた運命の暗さと悲しみに惹き込まれた。
(mizukiさん)

表紙絵「Untitled」(無題)に誘われ見た
闇や霧や流れる時の中で迷子になった6人の物語。
私たちはどこから来たのか?何者なのか?どこへ行くのか?
骨や内臓まで透けて見えそうに内側を曝けて覗く深淵をぜひ。(ともみさん)

堕ちる瞬間がある。
恋に、絶望に、罪に、背徳に、執着に。
その先に待つ6編の抗えぬ本能、残酷な業。
闇深くぬらぬらした、まるで快楽を知る人間の秘部のような「黒い絵」が、
あなたを「堕ちる世界」へ引きずり込む。(まさむーさん)

時折現れる蛇は何の意味を持つのだろう。生と死の輪廻の象徴?神の使い?観ているつもりが本当は見られているのかもと思わずにいられない、永遠を生き続けるように存在する美術品の数々に目撃された人間たちの物語。(プレッツェルさん)

「闇」は、ただの黒ではない。
そこには数多の色が蠢いている。
赤、青、黄、そして白すらも。
流れる血、海の底、霧の中…
こんな原田マハがいたのか!
誰の中にも潜んでいる、どす黒い感情に感嘆する。(ayuminさん)

「満たされたい。」
その想い一途に、女は闇を彷徨うのだ。
室生寺の釈迦如来像の手指に魅せられたその訳は?アッシジの僧院で悟った永遠の愛の形とは?鮮やかにそして時には残酷に、夜明け前の物語は続いてゆく。(河合さくらさん)

これまでの著作を思うと少し戸惑いを覚える。それでもその着眼点のままに、かさぶたをつい剥がしてしまうような人間の生々しい欲望や感情を覗き見する感覚。目を逸らしたくても見ずにはいられないのだ。(Mさん)

黒い絵が私を見ている。
ページをめくるたびに、徐々に強くなる不穏の匂い。
平和めいた日常からズブズブと、6篇の小説たちは黒く艶めかしい沼の底へ、私をいざない堕ちていく。
私はいつのまにか、それを望んでいた。(harunatsuさん)

油絵の世界では黒の絵の具を使わず、色を混ぜることで黒を作るという。黒い絵に潜む色の正体は、その個々が誰かの感情であり、ほとばしる瞬間を捕らえたものが絵画なのかもしれない。名画「オフィーリア」のように。(小黒悠さん)

「この黒知ってる」
原田マハは一貫して絵画と対峙した作家である。
黒は通常いい意味で使われない。それが本作の罠だ。
読む途中「あ!」と自分の「黒」に足を取られている。
「痛みと優しさ」を黒で塗り重ねた6篇。(momoさん)

「誰よりも愛してる。」信じるはずないでしょうが、オトナの関係なんだから。でもさ、二番目だからってはっきり言う?知ってる、わかってる、わざわざ言うな!そんな、叫びが聞こえた。今回のマハはいつもと違う。
(とこママさん)

芸術作品が放つ力強さと繊細さは、時に人の隠秘を刺激する。本作はバッググラウンドの異なる様々な人生が『黒い絵』に塗り替えられる瞬間を描いた小説集。作者が題名に込めた「黒」は色彩としての黒なのだろうか。
(ヒロカさん)

奇怪な出来事に息を呑み、空想か現実か? とドキドキして読んだノワール短編集。マハさんが「黒」で描く情景は想像以上に多彩で、幾度も心揺さぶられます。日常から離れ、謎めいたダークな世界に引き込まれる一冊。(M.Tさん)

「彼の指を、憎らしく思う。」 不倫中の私は、室生寺の釈迦如来坐像の持ち上がった中指をみつめる…(「指」)
物語に散りばめられた「黒」
目くるめく展開、最後にひやり、読み返したくなる脳に刺激的な短編集
(ひろたんさん)

質感や色感の描写が物語を際立たせ、全体に独特の空気感をもたらしているノワール小説集。ゾクッとする展開ばかりで一度物語に引き込まれたら手が止められない。読了後も気になり続ける結末ばかり。二度読み必至。(ayanoさん)

黒々と歪む狂気。愛欲への渇望。巧みな仕掛けに引き込まれて読み進めるうち、狂気も欲望も芸術も渾然一体となって盛り上がり、最後に眩しく昇華する。人の闇と芸術の織りなす協奏曲に、読後不思議な解放感を覚えた。(Ayakoさん)

底なしの欲望に人生を翻弄される彼らが行き着く先は、楽園か?それとも地獄か?今までの原田マハとは違う、足元が覚束なくなるような感覚を得た作品。美と欲望は表裏一体と思わせる今までにない読書体験でした。
(れいなさん)

原田マハと数々の美術品にいざなわれて、漆黒の闇へと続く扉を開けてみませんか?扉の先で、あなたはこれまで知らなかった哀しく、美しく、妖しく輝く世界を体験することになるでしょう。さあ、ご一緒にいかが…
(しぃさん)

 

 

<書籍紹介>
『黒い絵』

原田マハ
2023年11月1日発売
■四六判/224ページ
■予価:1870円(税込)

著者自ら「ようやく封印を解いて世に出す“ノワール”小説集」と語る待望の新作は、アートの世界の闇にうごめく秘め事を描いた衝撃作だった!

──『黒い絵』の主な内容──
深海魚 Secret Sanctuary

高校生の真央は友だちも彼氏もいないうえ、クラスメイトからいじめられていた。そんな真央が安息を得られるのは押入れの中だけだった。真っ暗にすると「海の底」のようで……。
オフィーリア Ophelia
わたくしは絵の中の囚われ人。水に浸ってあとひと息で命が絶えるその瞬間を、生き続けています。ロンドンから日本へ連れて来られたわたくしが目撃した、残虐な復讐とは……!?
──ほかに「楽園の破片 A Piece of Paradise」「指 Touch」「キアーラ Chiara」「向日葵奇譚 Strange Sunflower」を含む、全6編を収録。

原田マハ・プロフィール
1962 年東京都生まれ。関西学院大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術史科卒業。伊藤忠商事株式会社、森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館勤務を経て、2002年フリーのキュレーター、カルチャーライターとなる。’05年『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞し、’06年作家デビュー。’12年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞、’17年『リーチ先生』で第36回新田次郎文学賞を受賞。ほかの著作に『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『たゆたえども沈まず』など多数。’19年に世界遺産・清水寺で開催された展覧会「CONTACT つなぐ・むすぶ 日本と世界のアート展」の総合ディレクターを務めるなど、日本・世界各地のアートと美術館の支援を続けている。


構成・文/大平麻耶子


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