細く長く続いた缶への愛
とはいえ中学、高校、大学生にもなれば他のことへの興味の方が強くなってしまい、缶収集はほとんどしませんでした。ただ、缶という素材は常に好きだったのでしょう。“ソニプラ”(旧「ソニープラザ」、現「PLAZA」)や「カルディコーヒーファーム」、年に数回行く「東京ディズニーランド」でお菓子の缶を見つけては買ってコレクションし、机や本棚に飾ったり、収納に使ったりしていました。
その後、社会人となり、結婚し……多分、人生の中でいちばん忙しい時期に突入していくのですが、その間も細々と缶収集を続行。ベビーカーを押しながら、渋谷や表参道におしゃれなお菓子缶を探しに行ったのも今はいい思い出です。
2018年、他愛ないおしゃべりから生まれた書籍『素晴らしきお菓子缶の世界』
そして時はかなり進み2018年。気の合う編集者と飲んでいたときでした。何がきっかけだったかは忘れてしまいましたが、「お菓子の缶ってかわいいよね」「捨てられなくて溜まっていく一方だよね」なんて話をしているとき、ふと「私、3歳からお菓子の缶を集めていて、すごい量あるの。もはや家の中、カオス(笑)」と言ったのです。
するとその編集者が「中田さん、それ本にした方がいいんじゃないですか?」と言い出し、そこからあれよあれよと企画がとおり、2021年10月にお菓子缶専門書『素晴らしきお菓子缶の世界』(光文社)を刊行。私自身は、「こんなオタク本、出させていただけただけで感謝! オタクとして最高の思い出ができました」と思っていたのですが、さまざまなメディアが取り上げてくださり刊行約1ヵ月で重版。翌年からは2冊目となる通称“黄色本”『もっと素晴らしきお菓子缶の世界』(光文社)に着手することになりました。
多くのお菓子缶マニアたちとつながることができました
2冊の本を刊行して何よりも良かったと思っているのは、缶マニアの人たちとSNSを通じて繋がれたこと。世の中にはこんなにも缶好きの人がいる! 私の他にも缶が捨てられなくて困っている人たちがいる! たくさんの同志が存在することを知り、本当にうれしかったのです! それまでお菓子缶について誰かと熱く語ることなどありませんしたが、こうした皆さんと知り合えた今、新たな缶情報を交換したり、手持ちの缶の見せあいっこしたりさせていただいています。
仕事も引き寄せる“好き”のパワーの強さ
印象に残っている言葉があります。
「何かを強烈に好きというパワーは周りを巻き込みますよね。僕はお菓子缶にとくに興味はありませんでしたが、中田さんの話を聞いて“お菓子缶ってすごい!”と思ってしまいました」
取材に来てくださった記者の方の言葉なのですが、なるほどと思いました。確かに何かについて熱く語られると、その熱量に圧されて「それっていいかも!?」と思ってしまいますよね。私はお菓子缶に関してその熱量がすごいらしく、本刊行後と、ある人気テレビ番組に出演させていただいて以来、「その缶好きのパワーを爆発させてください!」といろいろなところから缶に関するお仕事をいただくようになりました。ただ“お菓子缶が好き”というだけできた47年。まさか仕事につながるとは思っておらず、改めて“好き”の引き寄せパワーのすごさを感じています。
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