大好きなさくらももこさんや松浦弥太郎さんにインスパイアされて(笑)

——『よかん日和』には、イモトさんが出会った素敵な人やモノが紹介されているだけでなく、「思っていること」というパートでは独自の視点でご自身の価値観が綴られています。例えば、健康目的で泥のサプリメントを飲み始めたらいつの間にか「イモトさんはコーヒーに足ふきマットを入れて飲んでいるらしい」と誤解されていたというエピソードでは、人づてに話が伝わる怖さや「直接合って話すこと」の大切さに触れています。笑いながら読めて、ハッとさせれられるような気づきも得られる一冊だと思いました。

イモトアヤコ「芸人が内省的なことを書くのは恥ずかしいと思っていた」自分のメディアを運営して生まれた変化【前編】_img0
 

イモト:ありがとうございます。今回は『棚からつぶ貝』のときよりも自分自身のことに関して書いている回が多いんです。毎週1本のペースでエッセイを書いてきたのですが、たま〜に、内省的なことを書きたくなる瞬間があるんです。私は基本的に笑いを届ける芸人なので、そういうことを書くのは恥ずかしいと思っていたのですが、年齢を重ねたからか、「私にもこういう部分があるんですよ」とさらけ出せるようになったんです。読み返すと小っ恥ずかしいエピソードもあるんですけど……我ながら読みやすい本だとは思いますよ! 私が大好きなさくらももこさんも、松浦弥太郎さんも、文章が読みやすくて頭に入ってくるじゃないですか。それにインスパイアされた文章を書いたつもりなので(笑)。ぜひ活字が苦手な人にも手に取ってほしいですね。

 


——特に思い入れの強いエピソードはありますか?

イモト:短い文章ですが、「個で考えねば」というタイトルのエッセイですね。当時、苦手な人に出会ってモヤモヤしたのですが、性別や年齢や国籍から苦手な理由を探そうとしている自分に気づいたんです。それがナンセンスであることは、世界中を旅していろんな人と触れ合う過程で学んでいたはずなのに……個で考えることを忘れかけていたなと。そうやって素直に反省を綴ったエピソードは読者の方々から大きな反響をいただくことが多いですが、エモい文章を書こうとしているわけではないですよ! エモくなり過ぎないように、なるべく夜に書かないようにしているので!

——子育てに関する喜びや葛藤を綴ったエピソードも多く、バラエティ番組では超人的な活躍を見せてくれるイモトさんでも、一人の母親として悩む日があることが分かります。そこに安心する読者も多いと思いますが、今回の本を通してどんなインスピレーションを受け取ってもらえたら嬉しいですか?

イモト:今回は素の自分をさらけ出したので、テレビのイモトだけを知っていただいている人にとっては意外な一面がたくさん詰まっていると思います。気軽に楽しく読んでいただければ嬉しいですが、日常のモヤモヤがフッと軽くなるような言葉をひとつでも見つけていただきたいですね。なんだかんだ言って、それなりにエモい言葉が書かれているはずなので(笑)。


インタビュー後編は12月23日公開予定です。
 

 

 

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<新刊紹介>
『よかん日和』
著・イモトアヤコ
¥1540(税込)
株式会社 文藝春秋

ウェブマガジン「よかん日和」で連載したエッセイを書籍化。イモトアヤコが出会った「ステキな人のこと」、大好きな「物のこと」、そして「子育てのこと」などなどを収録。憧れの人気YouTuber・OKUDAIRA BASEとの対談も掲載。変わっていく暮らしの形と、変わらないイモトさんのまっすぐな人柄に胸を打たれること間違いなし。

撮影/柏原力
取材・文/浅原聡
構成/坂口彩
 

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