欧米マダムというと、パッと見て華やかでゴージャスな服を着ているような印象がありますが、彼女たちをよく観察してみると、一点ずつはシンプルなアイテムを着ていることが多いのです。欧米マダムのような、「普通の服を着ているのに、最上級に印象的な着こなし」が理想というスタイリスト佐藤佳菜子さんに、奇抜な服を着なくても素敵に見せるために心がけていることを聞きました。
 

ゴージャスな印象が強い欧米マダムたちも、よく見ると普通の服を着ている


「例えばシンプルなニットやシャツに、ベーシックな形のパンツ。奇抜な色や一点豪華なデザインの服は何一つ使っていないのに、なぜかとびきり素敵な女性っていますよね。私は“普通の服で最上級の印象的な人になる”とよく表現しているんですが、ごく普通の服を着ているだけなのに、トータルで見たらなんだか映えてて素敵に見える着こなしが個人的にとても好きで、たくさんの経験を重ねてきた大人の女性だからこそ出せる素敵さ、ツヤっぽさだと思うんです。

華やかな印象のある欧米マダムたちの装いも、よく観察してみると、実は一点一点は普通の服を着ていることが多くて。例えばこちらのマダム。着ているのはコートもシャツもパンツも靴もバッグも、いわゆるコンサバなアイテムばかり。でもなぜかパッと目を惹きますよね。おそらく何気なく着ているようで、実はとっても計算されたスタイリングなんだと思います。きっと彼女の脚がとびきりきれいに見えるであろうパンツだろうし、コートは身体によく合った骨格を美しく見せてくれるコートなんだろうし、シャツの開け具合や袖の捲り具合も計算されていて。コートとパンツと靴の色も偶然合っているわけではなく、合わせているはず。
決してラクして素敵に見せようということではなくて、計算ずくの“合わせの妙”によって着映えているんですよね、きっと。

ラクなおしゃれ、これを着ておけばOKといった、考えなくていいおしゃれが人気を集める今の時代とは逆行する考え方かもしれませんが、このマダムのように、ストイックに自分に似合うものを追求して、細部にまでこだわって服を着ることが、普通の服で着映えるために最も必要な心がけなんじゃないかと思います」

 


「同じ色の色合わせ」にとことんこだわる。そのストイックさが、大人の女性を印象的に見せてくれる

 
ジレ/デパリエ ジャケット/エディション ニット/プルミエ アロンディスモン パンツ/ラシク ベルト/ボッテガヴェネタ バッグ/ロエベ 靴下/タビオ 靴/ポルペッタ
KANAKO’S コメント 
このコーディネートは、黒とネイビーの服を素材違いでひたすら重ねているのですが、着ているもの一点ずつはどれもベーシックなアイテムばかり。でも、一言で黒とネイビーと言っても、黒にもネイビーにもいろんな色の幅があるので、ソックスの色に至るまで、微妙な色の差が出ないように実は細かくこだわっています。

同じ色を着ていたら、「あえて合わせてるんだな」という特別感がどんどん出てくるんです。イギリス王室のロイヤルファミリーの方々も、よく見ると全身の色が合っています。妥協せずにとことん色合わせにこだわることは、普通の服をスペシャルに見せるための簡単なテクニックの一つだと思います。

例えば私は持っているトップスと似た色のボトムスを見つけたら買うんです。似た色のタイツも見つけたら買うし、持っているパンツに似た色のソックスを見つけたら買います。こうやって日頃から色を合わせる努力をしていて、手持ちの服に合う色のものを発見したら買うようにしていくうちに、持ち物の色がどんどん合ってきて。そうすると地味な色同士でも印象的に見せられるようになってくるんです。



「自分の身体をきれいに見せてくれる」服選びは、普通の服で着映えるために必要不可欠な要素

 
ニット¥38500/サードマガジン スカート/ジャンバティスタ・ヴァリ サングラス/アーケット バッグ/メゾン カナウ 靴下/タビオ 靴/プーマ
KANAKO’S コメント
身体がきれいに見えることって、簡単に素敵な印象に見せるための基本な気がしているので、「自分の身体に合った服を選ぶ」ことも、普通の服で着映えるためにとても重要な要素。例えばこのスカートは10年くらい前に買ったものなんですが、捨て屋である私がこのスカートを捨てなかった理由は、穿くと絶対に自分の身体がきれいに見えるような気がするから。このスカート丈が流行っていないときは出番がないんですが、それでも自分の身体がきれいに見える服は、ずっと捨てずに取っておいているんです。

10年前はこのスカートにパンプスを合わせていたかもしれないけれど、今ならちょっとボリュームのあるスニーカーを穿くなど、時代のムードに合わせる計算も必要。普通の服で素敵に見せるのは簡単なことではないけれど、だからこそ挑戦しがいがあって面白いんです。



次回のテーマは、欧米マダムのように、「大胆な色の服を気負いなく着る」には? ダークな色が多くなりがちな冬の装いを華やかに見せてくれる大胆な色使いについて、佐藤さんに教えていただきます。お楽しみに!


【お問い合わせ先】
サードマガジン tel. 03-5784-2588

※掲載アイテムで価格が入っていないものは本人私物です。

撮影/長谷川怜実(S-14)
着用・スタイリング/佐藤佳菜子
ヘア&メイク/桑野泰成(ilumini)
構成・文/堂坂由香
 

 

 

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