鳥文斎栄之(ちょうぶんさい・えいし/1756-1829)の名前を聞いたことがありますか? 五百石の旗本(はたもと)の長男として生まれ、将軍の絵具方を務めたという異色の浮世絵師。「美人画」の名手として、海外では歌麿と並ぶ人気を誇ります。大英博物館やボストン美術館など、国内外から錦絵や肉筆、約160点の名品を集めた、栄之の画業を知ることができる初めての展覧会が始まりました。
独自の「美人画」で人気絵師に
先頭で優雅に踊る振袖姿の若い女性をはじめ、9人の女性が楽しむ舟遊び。太鼓や鼓の音も聞こえてきそうです。真ん中にはお酒を飲む女性の姿も。背景の川向うに見える低い鳥居は、三囲(みめぐり)神社。隅田川での舟遊びでしょう。それぞれの着物の柄の美しさにも目を奪われます。
「枩(松)・竹・梅」と書かれた掛け軸を持つ三美人。着物や前垂れの紋から、高嶋おひさ(右)、難波屋おきた(中)、立花屋おたつ(左)とされています。おきたとおたつは当時評判の水茶屋の看板娘。おひさは両国の煎餅屋の娘でした。「12頭身美人」とも称される栄之美人の立ち姿。評判の美人3人を「松竹梅」というおめでたい画題になぞらえているのでしょう。
遊女を六歌仙に見立てたという「畧(やつし)六歌撰(ろっかせん)」。喜撰(きせん)法師の有名な「我庵ハみやこのたつみしかそすむ よを宇次山と人ハゆふなり」の和歌が画面左上のカルタに記されています。
栄之には珍しい大首絵(おおくびえ)。ゆったりした襟元、貝合わせの貝を手にした微笑み。乱れた髪が頬にかかりますが、あくまでも上品。艶っぽいのに清新な絵です。
サムライから浮世絵師に
仕えていた将軍・徳川家治 (1737~86) の死もあってか、家督を譲って自由な身となった栄之は浮世絵師として活躍するようになり、豪華な大判錦絵3枚続や5枚続、上流階級を描いた作品など、他の浮世絵師には見られない栄之ならではの作品を残します。
そしてそのキャリアの後半は肉筆画(版画ではなく、絹や紙に直接描かれたもの)に専念した栄之。武家の出身であった栄之の絵の購買層は、限られた上流階級とも言われます。上質な絵具を使い技巧を凝らした肉筆画や、新発見・初公開の屏風は、ぜひ展覧会でご覧ください。
展覧会情報)
「サムライ、浮世絵師になる! 鳥文斎栄之」展
これまでも「鈴木春信」や「喜多川歌麿」展など、さまざまな浮世絵展を主催してきた千葉市美術館が贈る“初春のお年玉”です。
会期:2024年1月6日(土)~3月3日(日)※前後期で展示替えを実施
会場:千葉市美術館(千葉市中央区中央3-10-8 TEL:043-221-2311)
開館時間:10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)※入場受付は閉館の30分前まで
休室日:1月9日(火)、15日(月)、2月5日(月)、13日(火)*第1月曜日は休館日
チケット読者プレゼントのお知らせ
5組10名様に招待券をプレゼント。
千葉市美術館で開催されている「サムライ、浮世絵師になる! 鳥文斎栄之展」(2024年1月6日~2024年3月3日)の招待券をプレゼントいたします。
応募締め切り:1月24日(水)〜11:59まで
●応募にはmi-mollet(ミモレ)の会員登録(無料)が必要です。
●プレゼントのご応募は、1回までとさせていただきます。
●当選者の発表は賞品の発送をもってかえさせていただきます。
構成/からだとこころ編集チーム
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