お仕事帰りに同僚と。大切な家族や友人と。
心からおつかれさまと伝えたい日のレストランを厳選してご紹介します。

今回紹介する2軒は北イタリア料理の名店。いずれも、シェフやサービスが人気店の出身です。なにより、寒いこの季節、滋味豊かな北の料理を食べに、足を運びたくなるはず!


北の料理に、南と仏のエッセンス。3つの個性が織りなすイタリアン
アンビグラム(広尾)

フリウリ風 4種チーズのラヴィオリとカボチャのズッフ¥2100。本場では、カボチャとポレンタをとろとろに、スープのように楽しむそう。

カボチャの甘みとポレンタの素朴な食感に、身も心もじんわり温かくなるラヴィオリの皿。実はこれ、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の郷土料理ズッフのアレンジ。定番でメニューにのるビゴリもしかり。シェフの伊沢浩久さんが作るのは、自身が修業を積んだフリウリ、ピエモンテ州など北部の料理です。一方、双子の弟の和明さんは、リヨンやパリなどで学んだパティシエ。ピスタチオなどイタリア菓子によく使われる食材を使い、繊細なフランス菓子に仕立てる。それらを軽快にサーブするのが、渋谷のシチリア料理店『ドンチッチョ』出身の米津真寛さん。北に南にフランスに……。3つの個性がひとつになって、この店ならではの自由な雰囲気を生んでいます。

ポルケッタ風 大山鶏のロースト栗と赤キャベツ、ビーツの煮込み添え¥2700。マルサラ酒とハチミツで表面をパリッとさせた鶏肉は、中がジューシーにしっとり焼き上がり、火入れがピタリ。ふわりと香る栗の甘い香りも食欲をそそります。
ピスタチオとミルクチョコのタルト グリオットチェリー添え¥900。いかにもイタリア菓子らしい素材を使いながら、仕上がりは繊細で美しく、フランス菓子の趣。
ガラス越しの緑が、夜も温かい雰囲気を作っている居心地よいダイニング。厨房も見えます。
緑がいっぱいのエントランス。

 【アンビグラム】
東京都港区南麻布4-12-4プラチナコート広尾1F  tel.03-3449-7722  営業時間:月~金/13:00~16:30LO(カフェ)、18:00~23:00LO 土/12:00~14:30LO、18:00~23:00LO 休日 : 日曜、祝日の月曜  カウンター6席、テーブル32席、料理はアラカルトのみで、シェフ特製ビゴリ¥2400、イカの墨煮¥1800など。カフェタイムにはピアディーナ(ロマーニャ地方の薄いパン)2種ワインはグラス赤・白3種で、¥800~、ボトル¥3800~ (メニューは季節によって異なる。)(すべて税別)


おいしさを求めて道具も手作り!情熱溢れるシェフの最北端の皿を
ダ・オルモ(神谷町)

仔鳩のラグー 自家製リガトーニ¥1800。全粒粉と卵で作った、しっかりとした生地のリガトーニには、内臓も入った濃厚なラグーを。(季節によって異なる)

仔鳩を使った自家製のリガトーニは、生地のみならず、製麺の道具も木片に彫刻刀で溝を掘った自家製。卵入りのしっかりとした生地に不揃いな溝が入り、バルサミコで甘みをつけた仔鳩のラグーが絶妙に絡みます。見た目はシンプルですがが、食べてみれば、シェフの工夫と情熱が詰まっていて、しみじみ旨い!そんな北の皿に出合える店です。シェフの北村征博さんは、新宿の人気トラットリア『ブリッコラ』出身。同店で5年間を共にしたサービスの原品真一さんと、修業中にもっとも感銘を受けたというトレンティーノ=アルト・アディジェ州の料理が主役の店を構えました。料理をアラカルトでオーダーしても、取り分けてサーブ。コースのように楽しめるのも特徴です。

熟成但馬牛カメノコのカルネサラータ¥2400。ハーブと塩漬けした但馬牛のもも肉は、旨みがしっかり。山梨・上野原ハーブガーデンから届く味の濃いルッコラとよく合う。
クエとあさりのラサ¥1800。リゾット?と思いきや、実はパスタ。ラサとはエミリア・ロマーニャ州の郷土料理で、シェフはジャガイモのピュレを混ぜて、もっちりとした生地を作り、チーズグレーターで削って作っているのだとか。
テーブル席もいいけれど、料理好きなら、シェフと話せるカウンターが特等席。
入るとすぐにセラーがあるのは『ブリッコラ』と同じ。

 【ダ・オルモ】
東京都港区虎ノ門5-3-9 ゼルコーバ5 101 tel.03-6432-4073  営業時間:火~金/11:30~14:00、
月~土/18:00~23:00  休日 : 日曜、祝日、月曜・土曜昼  カウンター4席、テーブル20席  料理はアラカルトと、コース¥6500がある。トレンティーノ・アルト・アディジェのカネーデルリ2種  個性的なイタリアワインは200種ほど。キャンティクラシコグラス¥950~ランチ¥1500 (すべて税別)

このページは、女性誌「FRaU」(2013年)に掲載された
「おつかれレストラン」を加筆、修正したものです。
撮影/谷 尚樹 取材・文/齋藤優子 構成/藤本容子