ドアを開けるとそこは黄金色に輝いていた……!
1軒目に内見した物件は最寄り駅が今と同じで、駅徒歩5分、9畳の5階で家賃は8万5000円プラス管理費5000円のとてもきれいな物件。部屋は申し分ないのだけれど、眺望がアウトだった。向いのお宅から丸見えだし、空も狭い。私は眺望をとっても重視しているので、不動産屋さんにその旨をお伝えすると「駅近の物件で眺望がいい物件はちょっと難しいですねー」とおっしゃられた。
……いや、うち駅徒歩1分の4階で眺望抜群やねん。目の前に空しかないねん、富士山も見えんねん。と心の中で呟きながら「そうですよねー。ちょっと検討しまーす」と心のシャッターをがらがらと閉じてお暇(いとま)。
私は眺望に関しては譲れない。だって今の部屋からの景色が最高なのだもの。これで駅徒歩1分で家賃が5万円なのだもの。問題は広さ。執筆できるスペースが欲しいねん。そして、願わくばあのモーニングルーティン動画に出てくるみたいな部屋に住みたいねん。そんな野望を抱きつつ、2軒目の内見に出発した。
ここは今住んでいるエリアから少し離れているけれど、3階で6畳ほどの2部屋があって、キッチンも広くて、管理費込みの8万9000円。そして、近所には親友のみっちーが住んでいて、これまでも私たちはご近所仲間としてあらゆる飲食店、駅のホーム、銭湯、まさかの税務署などでミラクルすぎる遭遇をしてきたけれど、ここに住んだらもはや同居。会っていない時間の方が少なくなるぐらい遭遇するかもしれない。
それはお互いにとってどうやねんと思いつつ内見すると、ドアを開ければそこは黄金色に輝いていて思わずわああと声をあげてしまった。2部屋とも南向きの窓が大きくて夕日が部屋の畳を照らしてナウシカのらんらんらんらららんらんらんが脳内で爆音で再生されて雄叫び。なんてすてきなお部屋なん? しかもキッチンは紫色、お風呂場は私の大好きなエメラルドグリーン、収納もあって、お隣のお部屋に住んでいらっしゃる大家さんの息子さんもとってもとっても親切で「屋上もあるんですよ」と案内されて上ってみれば、なんと3階建てなのに東京の全てが見渡せて、富士山なんて周りの山脈ごと全部丸出し。しかも、私が東京で一番好きな建築物ドコモタワーもお出ましで「ここから花火大会も見られるんですよ、みんなで屋上に集まって見ています」とおっしゃるほどの絶景。
こ、こ、これは、ここでお茶したり、本読んだり、ヨガしたり、日向ぼっこしたり、洗濯もの干したり、夜空を見たり、あろうことかこのビューのなか執筆できたら、こんな煩悩に浸して出汁とったみたいなエッセイじゃなくて、もっと崇高な、皆様にとって有意義かつ心ばしゃばしゃ洗われるようなバイブル的文章が書けるのではなかろうか。一瞬にして眼前にはアカルイミライが広がり「前向きに検討させていただきます!」と夢見心地の笑顔で声高に宣言したあと不動産屋さんの事務所に行き、初期費用の見積書を出してもらい、我に返った。
「あ、お金ないやん」
〈次週、後編に続く……!〉
<INFORMATION>
坂口涼太郎さん出演
『ACMA:GAME アクマゲーム』
毎週日曜よる10時30分 日本テレビ系で放送中
日本有数の総合商社・織田グループの御曹司だった織田照朝は、13年前、父・清司を正体不明の男に殺され、全てを失った。犯人の目的は、清司が持っていた1本の古びた鍵……。その鍵を手に入れた者は、集めた鍵の数だけ運気が上がり、99本集めると、この世の全てを手にすることができるといわれる「悪魔の鍵」だ。
殺される直前の父から「悪魔の鍵」を託された照朝は、海外に脱出。以来、世界中を渡り歩いて「悪魔の鍵」の秘密を追っていた。そして──父の無念を晴らすため13年ぶりに日本に戻って来た照朝は、「悪魔の鍵」を狙うライバルたちとの命懸けの頭脳バトル「アクマゲーム」に巻き込まれていく……!
人知を超えた悪魔の力がいざなう、命を賭けた頭脳×心理戦!果たして父を殺した男の正体は!? 負けたら最期…極限の遊戯(デスゲーム)が始まる!!
文・スタイリング/坂口涼太郎
撮影/田上浩一
ヘア&メイク/齊藤琴絵
協力/ヒオカ
構成/坂口彩
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