30代も半ばに差しかかったあたりから、自分の人生にまるで事件が起きていないことを自覚しはじめていました。もちろん日々細々と何かしらの出来事はある。だけど、友人と酒を酌み交わすとき、「最近どう?」と聞かれても取り立てて報告する近況がない。年末に1年を振り返ってみても「忙しかった」「仕事ばっかりしていた」で終了。

周りは「結婚した」「子どもが産まれた」「息子が来年の春で小学生になる」など、着々と人生ゲームのコマを進めているのに、自分は同じエリアを延々と堂々巡りしている気分。家族を持つと子どもの成長が自然と年表を埋めてくれるのだろうけど、シングルでいるとどうしたってそのへんがアバウトになる。

40代独身・フリーランスの僕が「賃貸と持ち家、どっちが得か」問題を悩み抜き、それでもマンション購入を決めたワケ_img0
 

会社員でもない僕は、昇進とか異動とか、外的要因によって環境が変わることもないので、ますます変化に乏しい。このまま似たような毎日を送っていたら、どっかで頭がおかしくなりそうな危機感があった。その前に、これぞというデカい事件を起こしたかったのです。マンションを買うことは、スカスカの自分史に碑を建てる行為でした。

もう一つ理由を付け足すとするならば、たぶん何かを残したかったんだと思います。自分はこれだけのことをやり遂げたのだという成果を、物理的な意味でも精神的な意味でも残したかった。

僕の生業である記事を書くという仕事は、どんなに心を尽くしたところで、おおむねその場限りで読み捨てられていくものがほとんど。何年も前の記事を何度も何度も読み返してくださる方がいることはもちろんよくわかっていますが、それでも何かを残せたと思えるほどの達成感を味わえることは稀です。

瞬間風速的に消費されていくものではなく、厳然と残るものをつくりたい。そして、それを10年、20年と末永く慈しんでいきたい。たぶんこれからの僕自身が目指す働き方/生き方というのがそれで。マンションを買うことは、自分がこれからどんなふうに生きたいかを確認・実践する行為でもありました。

そんな心境に後押しされ、マンション購入へ舵を切ったのですが、それは思った以上に長く険しい旅路の始まりもでもあり……。一体、どんな荒波が待っていたのか。続きは、また次回。

 
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『自分が嫌いなまま生きていってもいいですか?』
講談社・刊 1430円(税込)
※電子書籍は、書き下ろしのおまけエッセイ付き。

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生きづらさを抱える人たちから、共感の声多数! “推し本”著者による人気連載が書籍化。

本屋に行けば「自己肯定感」をテーマにした書籍がずらりと並ぶ昨今。
でも、実際に自己肯定感の低さで悩む人にとっては、自分を愛することの大切さは理解しつつ「そんな簡単に好きになれてたら苦労しないよ…」というのもまた偽らざる本音でしょう。

本書では、自分が嫌いなことには誰にも負けない自信のある(?)著者が、

◆「自分嫌い」を決定づけた、幼い頃からのコンプレックスや苦い経験の数々
◆大人になって日々直面する“自己肯定感が低い人あるある”
◆自分を好きになりたくて、“自分磨き”で試行錯誤した日々
◆そして辿り着いた「これ以上、自分が傷つかないための方法」

を、面白おかしく、ときに切なさも交えて綴ります。

自分のことが好きになれなくても、人に優しくすることはできるし、幸せにもなれるはず。「なりたいものになれなかった」「誰にも選ばれなかった」そんな自分と、折り合いをつけられずにしんどさを抱える人たちの背中に、そっと手を添える一冊です。


イラスト/Shutterstock
構成/山崎 恵