歌手になったのは好きだからではなく、“生きるため”


——中川家ザ・ラジオショーを拝聴して、前川さんの独特過ぎる哲学に、驚きと爆笑の連続でした。中でも、歌手はなりたくてなったわけではなく、食べていくためにやっているというのがとても印象的で。今の社会では、好きなことを仕事にしなきゃいけないという圧力みたいなものがあります。歌手といえば好きでなる代表的な仕事のようにも思えますが、前川さんの場合、とにかく食べていくために、自分が戦える場所、活かされる場所を探した結果、歌手になったという感じなんでしょうか?


前川清さん(以下、前川):活かされるというか……。「生きるため」というのかな、いかにして食べていくのかを考えて歌手になった、そういう感じでした。だから、目立ちたいとか、自分の歌をお届けしたいとかはなかったです。やっぱり生まれ育った環境において、貧乏な生活というのが根本的にありましたから、人様の事を考える余裕がないですよね。人の幸せとか、いろんなことを考えられるのは、自分がある程度裕福だからできること。自分が満たされないとできないんです。

「歌に浸らない、聞かせようと思わない」前川清の意外な発言から考える、自分がないからこそ得られるもの【インタビュー前編】_img0
 

前川:生き抜いて来たっていう程でもないですけど、もう行き当たりばったりでしたね。今、目の前にあるものを一生懸命にやってきた結果、こうなりました。だから、別に楽しくはなかったですよね(笑)。

 

——前川さんは現在75歳ですが、70歳まで、他の仕事に転職できるならいつでもしたいと思ってらっしゃったそうですね。

前川:どんな仕事でもいいのですが、より一層お金をいただける仕事が、他にもっとあったんじゃないかなと思っているんです。歌をどうしても歌いたかったという自分はいなかったし、歌手に固執してないですから。でも、ある意味好きで入った歌手の道ではなく、食べていくため、生活のためだからこそ、一生懸命やってこれたのかもしれません。