こんにちは、エディターの昼田です。
今日も前回の続き。どうして人は服が欲しくなるのだろう、という私がずっと考え続けてきたテーマについてお話したいと思います。
私の場合は、どんなときに服を買いたい衝動が湧いてくるのか。セレモニー用の服など必要に迫られて買うケースを除いて、ふと欲しくなる瞬間はどんなときか。考えてみたらこんな感じでした。
①セールのとき(詳しくは前回の記事へ)
②嫌な出来事があったとき
③SNSなどで刺激を受けたとき
④季節の変わり目(これもありましたね、追加します!)
いずれも服が欲しくなるのは、「服が好きだからではない」というのが私の結論です。
具体的にみていきます。
【②嫌な出来事があったとき】
その昔の私は、ものすごくストレスが多い人でした。人間関係や仕事のストレス、年齢的な焦り、キャリアの不安、自分に対する苛立ち。でもどうしたらいいかわからない。自分にげんなりする。そういうときにふらっとショップに行って安易に買ってしまうわけです。すぐにいい気分になって、明日も頑張ろう! なんて思っちゃったりして。
これって「新しい服が欲しい」ではなくて、私は手っ取り早く「新しい自分になりたかった」のだと今となっては思います。外見が変わると、自分は変わったと錯覚してしまう。服って変わるツールとしてはものすごく手軽なんですよ。
昔の私は、本当によくやっていました。
でもこれって根本的な解決にはならず、服を買って逃げていただけ。本当にやらなきゃいけなかったのは「なぜ私はイライラしているのか?」と一歩踏み込み、自分の本音を掴んでいくことだったと思います。
イライラの裏には必ず、「本当は、私は〇〇したい」があるのです。
本当は、私は相手にこう言いたかった
本当は、私はこの仕事を断りたかった
だけどそれをやってはいけない、できない、どうせ無理、という思い込みを持っているから、ぐっと押し込んでしまう。
そう、「自分の内側にあるものを表に出したい、表現したい」が「服が欲しい衝動」を起こしているのだとあるとき気がつきました。
【③SNSなどで刺激を受けたとき】
インスタでおしゃれな着こなしを目にしたら、いいな〜私もこれ欲しい! となる。
これも同じなんですよ。
「インスタのこの人が着ている服が欲しい」、ではなくて根底にあるのは「この人のように服で堂々と自分を表現したい」なんです。あなたの内側にまだ表に出せていない、眠っているものがあるのです。
【④季節の変わり目】
季節の変わり目は真新しい服が並び、否応なく刺激を受けますよね。私も手持ちのものに飽きて、何か欲しいなぁと思うことがよくありました。
それは「変化したい」という気持ちがあるから。同じことをし続けている、現状維持な自分に飽きているんです。「変わりたい」も結局、内側にあるものが表に出たがっているからこそ。でも人は新しい服を身につけることで「変化した自分を味わおう」としてしまいます。だって新しい一歩を踏み出すよりも、洋服を買うってすごく簡単なんですよ。
自分を表現する。
それは、この連載のように自分のことを文章にすることかもしれないし、写真を撮る、絵を描く、ダンスを踊る、器を作る、うたを歌う、楽器をひく、服を作る……本当はやりたいけれど諦めてしまったり、やっても意味がないと思っていたり、我慢していることがみんなあるのだと思います。
私の場合は、隅々まで自分の好きが詰まったサイトを作ってみたいとずっと思っていました。いつもクライアントの仕事をやってきたけれど、誰にも迎合せずに、自分の思うままに好きなだけこだわってみたい。
内側にある、自分の熱狂を表に出していく楽しさは、服で得られる束の間のワクワク感とはわけが違います。圧倒的な喜びと満足感は、服なんかでは代用できないのです。
ですから今の私は、服がふと欲しくなったときにいきなり買いに走るのではなくて、まずは自分に問いかけるようにしています。
「私の中にまだ表現できていないことがある。それはなんだろう?」と。
実際に行動に移せるかどうかではなくて、大切なのは「本当は〇〇がしたいと思っている自分」を認めていくことだと思います。そういう本当の自分がいるのだと知っていくこと。
服が欲しくなるのは、持ち主に気がついてもらいたがっている才能からのサイン。あなたにもたくさん届いているはずです。
昔の私は、無視しながら生きる人生でした。
今の私は、気づいて丁寧に光を当てていく人生です。
大きく変わりましたよね。
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『1000枚の服を捨てたら、人生がすごい勢いで動き出した話』
著・昼田祥子
¥1540(税込)
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クローゼットに収納術はいりません。
「クローゼット=本当の自分」にできれば、勝手に整うものだから。
ただ、自分の心地よさに従うこと。
本来の自分を生きるという覚悟を決めること。
捨てられずに人生を詰まらせているものに向き合い、手放していけたとき、人生はすごい速さで自分でも思いがけない方向に進んでいきます。
1000枚の服を溜め込んだファッション雑誌編集者の人生を変えた「服捨て」体験と、誰でもできるその方法を伝えます。
着用・文/昼田祥子
構成/出原杏子
前回記事「「新しい服が欲しい!」からわかる人間の心理(前編)。だから私はセールに行くのをやめた【エディター昼田祥子さん】」>>
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