シリアスな中にある、微笑ましい要素
ある意味全員がライバルで、さらに不可解な事件が起こっていくこの作品。なのに時折客席から笑いが起こるほど、シリアスな中にクスッと笑える要素が織り交ぜられているのもおすすめなポイントです。個人的に推したいのは、久我と本多の関係性です。本多に憧れていたという久我と、見た目や演技だけでなく、その人柄も魅力的に見える本多。二人は久我の提案で、犯人を突き止めるためにひと晩同じ部屋で寝ることになります。お互いを監視するために取ったある行動と、翌朝の結末には爆笑してしまいました。
中盤から「誰も怪しくない…」になる
序盤はみんなが怪しかったのですが、中盤以降になると、逆に「誰も怪しくなくない?」という意味で戸惑います。条件的にこの人には犯行は無理だよね、という人を除いていくと「犯人いなくない?」となってくるのです。さらにストーリーが進むにつれて登場人物の人となりもわかってきて、好きになってくるので「この人が犯人なわけない」「この人がそんなことしたなんて思いたくない……」という願望も入ってきてしまいます。
そして、メインキャストながら途中までほぼ出てこない人物、劇団にいた天才女優・麻倉雅美(森川葵)がなぜこの場にいないのか、彼女に何があったのか。それもずっと気になっています。
この、ずっと真相が見えてこない感じがこの作品の醍醐味のひとつといってもいいかもしれません。
オリジナル要素も含まれた、誰も想像できないラスト
混乱の末に観たラストは、明かされる真相もその後に訪れるシーンも、まったく想像ができなかったものでした。原作にはない、映画オリジナルの要素も含まれています。原作未読の方はそのままフラットに、原作既読の方は映画ならではのラストを楽しむのをおすすめします。
スクリーンで聴く主題歌「FICTION」(WEST.)がしみる
エンドロールとともに聴くWEST.の「FICTION」がストーリーにぴったりで、すべてを知った後の心にじわじわ効きます。ぜひ映画館でこの感動を味わっていただきたいです。
作品紹介)
『ある閉ざされた雪の山荘で』1月12日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
出演:重岡大毅
中条あやみ 岡山天音 西野七瀬
堀田真由 戸塚純貴 森川葵
間宮祥太朗
原作:東野圭吾「ある閉ざされた雪の山荘で」(講談社文庫))
監督:飯塚健
脚本:加藤良太 飯塚健
音楽:海田庄吾 主題歌「FICTION」(WEST.)
配給::ハピネットファントム・スタジオ©2024映画『ある閉ざされた雪の山荘で』製作委員会 ©東野圭吾/講談社
構成/山﨑 恵
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