何か欠けていても、補い合えば大丈夫

牛窪:大人たちは、一般論として「失敗を恐れず、一度は結婚してみなさい」といったことを言います。ですが親として、いざ自分の子どもの結婚となれば、非正規はちょっととか、もう少し可愛い人をなど、つい「満月(100%)」を求めようとする。社会も「失敗を恐れず」と言う割には、離婚したシングルマザー(ファーザー)を満足に支援しない現実があります。

でも本来は、ある条件が少々欠けていたって、信頼できるパートナーと共に話し合い、補い合えば、満月に近づけることはできるのです。さらに言えば、当人同士が補い合えない部分は、周りが親身になって相談にのったり、家事や育児の実務を温かくサポートするなど、「社会で補っていく」ことも考えられるはずです。

それなのに、今の少子化対策は「お金さえ配っておけばいいんだろう」といった感覚に留まり、結婚生活がうまくいかない夫婦や、結婚どころか恋愛にさえ積極的になれない若者たちをほったらかしている状況です。「恋愛も結婚も、失敗すれば大きなリスクが待っている」と感じてしまえば、慎重な若者ほどなかなか一歩は踏み出せないでしょう。

 

結婚・子育てにまつわる「幸せ」の発信不足

ウエディングドレスを着て「最終回」ではない。「その先」を一緒につくる「共創結婚」とは?【牛窪恵さん】_img0
写真:Shutterstock

——第5章では、「共創結婚」に向けた24の提言について詳しく解説されています。


・男女共に、非正規を「永遠の非正規」にしない政策を
・結婚後の生活に希望を抱かせるよう、就労時間にフレキシビリティを
・民間や団体も様々なカップルを受け入れ、多様な結婚を「見える化」せよ
・不妊原因の半分は男性にも。エビデンスを基に、正しい情報共有を
                       ——『恋愛結婚の終焉』より

経済支援、労働環境の改善、ジェンダー平等、多様性の尊重など、様々な角度からの具体的なものばかりでとても参考になりました。若者が結婚しない、というばかりでなく、希望を持てるような社会にしていく必要がありますね。

牛窪:「当人同士だけでなく、社会全体で支え、共にアップデートしていきましょう」というのが、本来の共創の概念です。ですから、社会はまず多様な価値観を認めるということ。その上で、結婚生活や子育てに「幸せ」を感じている大人たちは、若者にもっともっとそのことを伝えいくべきです。私は上の世代の責任として、結婚・出産したことで見られる美しい景色をキチンと伝え、若い人にも結婚や出産に対して「大変でもあの景色が見たい」と夢をみせてあげなければいけない、と思っています。私自身も肝に銘じて、幸せの発信に努めます!

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『恋愛結婚の終焉』
著者:牛窪 恵 光文社新書 1034円(税込)

「いずれは結婚するつもり」という若者が8割以上いるにもかかわらず、なぜ日本では未婚化が進み、少子化が解消されないのか。「恋愛は面倒」「恋人は欲しくない」という若者たちが結婚に向かうために、従来の「結婚」の常識を再考。「結婚には恋愛が必要だ」という呪縛を解き、「結婚に恋愛は要らない」とする新たな「共創結婚」を著者が提案する。


取材・文/ヒオカ
構成/金澤英恵
 

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