3月3日は「上巳の節句」=桃の節句・ひな祭りです。五節句の1つである「上巳の節句」は、古代中国の頃から行われていた無病息災を願う厄払い行事が起源だと言われています。昔からこうした季節の節目である“節句”を大切にしてきた私たち日本人。慌ただしい日々を送る現代だからこそ、改めてこうした“節”を大切に、日本のお菓子を楽しんでみませんか。

 


後継者不足で“幻の菓子”と言われる金華糖

偶然、ある古道具屋さんで見つけた金華糖。約十五年ぶりの再会でした。

2月に入ると近所の小さな食材店のガラスケースにかごに入った鯛やハマグリ、たけのこにサザエ、桃に招き猫を象った砂糖菓子が並べられ、今は亡き祖父が毎年買ってくれました。家に帰ったらそれをひな壇に飾り、ひな祭りが終わるとその砂糖菓子は砕いて祖母や母が煮物に使ったり、コーヒーや紅茶に入れて最後まで楽しんでいました。そんな“春の風物詩”である砂糖菓子の名前は「金華糖(きんかとう)」。15年ほど前まではあった気がするのですが、いつしか見かけなくなり……。

「金華糖」作るのが非常に難しく、かつ大量生産はまず無理。そのため職人の数はどんどん減り、現在関東には作り手が1人しかおらず、石川県の金沢や佐賀県、富山県などで見かけることができるだけ。今回、私が偶然、古道具屋さんで購入したのも佐賀県唐津市の「篠原三松堂」のものでした。どこででも買えるものではありませんが、1人でも多くの方にこの日本古来の縁起のいいお菓子を知っていただきたく、今回ご紹介させていただきました。


長崎のひな祭りの祝い菓子「桃カステラ」

茂木一まる香本家 桃かすてら¥864

長崎県では“ひな祭りの縁起菓子”として誰もが知るという“桃カステラ”をご存じですか。私が知ったのは今から20年以上前。当時、勤めていた会社に長崎出身の方がいらして、その方のお母様がひな祭りが近づくと毎年編集部に“桃カステラ”を送ってきてくださったのです。

初めて見るかわいらしいお菓子にびっくりしたのですが、長崎では定番とのこと。以来取り寄せ、いつしかデパ地下でも取り扱いが始まったので毎年買うようになりました。“桃”は日本でも「古事記」の時代から不老不死や邪気払いの果実としていろいろな題材とされてきました。

そんな桃と長崎の郷土菓子であるカステラを合わせて生まれたのが、この“桃カステラ”だと言われています。桃の形に焼き上げたカステラに桃のアイシングを施したあま~いお菓子。本場・長崎では結婚や出産のお祝い時にも使われるそうですが、なかなかお目にかかれない貴重なお菓子、ぜひ1度味わってみませんか。