1981年の発売以来、多くの人に読み継がれている『窓ぎわのトットちゃん』。戦争の影に追われながらも「トモエ学園」でいきいきと過ごす子供たちの日常を描き、今なおみずみずしい感動を与えてくれる黒柳徹子さんの自叙伝です。国内だけで800万部以上、全世界では2500万部超の売り上げを記録し、「最も多く発行された単一著者による自叙伝」としてギネス世界記録にも認定(2023年12月)されました。

そんな前作から42年ぶりの続編として黒柳さんが書き下ろしたのが、『続 窓ぎわのトットちゃん』です。戦時下に「トモエ学園」を離れたトットちゃんが、家族とどんな日々を送り、生きる希望を見出していったのか——。ミモレでは3回にわたり、その物語を特別に一部ご紹介していきます。

 


高価だったバナナ。「毎日食べるぞ!」と突然言い出したパパ

写真:Shutterstock

トットちゃん=黒柳徹子さんのお父さんはヴァイオリニストで、新交響楽団(現・NHK交響楽団)のコンサートマスターをしていた黒柳守綱さん。そしてママは、NHKの連続テレビ小説『チョッちゃん』のモデルにもなった、エッセイストの黒柳朝さんです。

そんな二人のことをトットちゃんが伝えるパート「幸せな日々」では、「明日から、毎朝バナナを食べることにするぞ!」と突然言い出したパパと、戦後も高価で貴重だったバナナを毎朝食べられることになって喜ぶ、トットちゃんの素直な気持ちが綴られています。

実はこんなふうに、トットちゃんのお家のメニューは「よその家とはちょっと違っていた」ことも少なくなかったそう。
 


まだ戦争の影響がそれほどでもなくて、食料が手に入っていたころ、家では洋食が基本だった。朝食は決まってパンとコーヒー。パパは毎朝、木製の四角い箱の中にコーヒー豆を入れると、金属製の取っ手をグルグル回して豆をひいた。ガリガリガリ! コーヒーのいい香りがした。パンにもお決まりがあって、洗足の駅前のパン屋さんが、毎朝できたてを配達してくれる。外側が少し固い、お尻の形をした丸いフランスパンが、パパのお気に入りだった。

家族全員がそろった夜のお食事は、お肉料理。パパは牛肉が大好きだったので、ママはフライパンで焼いたり網焼やきにしたり、飽きないような工夫をしていた。普通の家では、焼き魚や魚の煮つけが多かったと思うけど、パパのおかげで、いつもおいしい牛肉を食べられて、トットは大満足だった。ただ、ママは魚派だったし、トットの二歳下の弟も魚派だった。
 


黒柳さんは「お肉好き」として知られ、自身のYouTubeチャンネル「徹子の気まぐれTV」でも焼肉をもりもり食べる食事風景を配信されていました。黒柳さんの元気の源が“お肉”なのは、お父様の影響なのかもしれませんね。