「ベートーベン」が繋いだパパとママの縁
ある年の暮れ、音楽家のパパは日比谷公会堂でベートベーンの第九(交響曲第九番)の演奏会を開催します。第九の第4楽章には「歓喜の歌」のコーラスがありますが、当時は“音楽学校の学生が歌う”のが通例だったのだそうです。パパとママの出会いは、このコンサートがきっかけでした。
そのコーラスの中に、東洋音楽学校(いまの東京音楽大学)に通うママがいて、パパと出逢うことになったのだ。グリーンの毛糸のジャケットとスカートに、同じグリーンのベレー帽がとてもよく似合っていた。どれもママの手編みだった。ママはとても美しくて、パパは一目でママを気に入ってしまった。パパの住んでいたアパートの一階にある「乃木坂倶楽部」という喫茶店に、お茶を飲みに誘った。すっかり気があった二人は、いろんなことを話しあった。運がいいことに、パパもハンサムだった。
二人は意気投合して時間を経つのも忘れて話し込み、気がついたときには電車もバスもなくなってしまって、パパはママを乃木坂倶楽部の上にあるアパートの部屋に招待。この時のことをママは、「二十歳にもなって、のこのことパパのあとについていった自分は、なんてお馬鹿さんだったのだろう」と振り返っていました。
それにしても、ベートーベンが第九交響曲を作っていなかったら、ママとパパは会うこともなく、トットも二人の子どもになることはなかったと思う。世の中には不思議なことがあるものだ。
まさに「運命」とも言える出会いが、音楽という繋がりによってもたらされた二人。そんなパパとママの娘であるトットちゃんも、この後に音楽への道を歩むことになりますが……そのお話はまたの機会にご紹介します!
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