こんにちは、編集・川端です。
昨日に続き、GWにおすすめの本をピックアップいたします!
今日ご紹介するのは、角田光代さんの『坂の途中の家』。
テーマは裁判員裁判。我が子を殺してしまった母親の虐待事件の裁判員になった里沙子が主人公です。里沙子ももうすぐ3歳になる娘がいる母親。扱うことになった事件は、30代の母親が生後8ヶ月の娘を浴槽に落として死なせてしまったという痛ましい事件です。果たして彼女は母親を裁くことができるのか。
最初は、母親がそんなことをするなんて信じられない!と思っていた里沙子ですが、事件の背景が明らかになり、いろいろな人が証言台に立つのを聞くうちに、私ももしかしたら……(読んでいる私だってもしかして同じ状況になったら……という想像さえしてしまいます)と心境が変わっていきます。
章立ては「公判一日目」「公判二日目」……と追っていくだけで、「公判八日目」の後は「評議」となります。事件の真相はぜひ本を読んでいただいて、なので詳しくは書かずにおきますね。
ミステリー要素もあるので、筋書きの先が知りたくてどんどんを先を読みたくなる、ともすればちょこちょこ読み飛ばしてしまうのが私のクセなのですが、これは本当に一文、一文、読み飛ばすところがない! 全てが大事な場面、大事なセリフなのです。
だから読み終わるのにすごく時間がかかりました。

里沙子さんは、裁判員を務めるために1時間半くらいかけて娘の文香ちゃんを義母の元へ預けに行かないといけないんですね。持って帰るのがうんざりするほどのどっさりおかずをもたされたり、文香ちゃんが泣きやまなかったり……里沙子さんの苛立ちと葛藤に胸が締め付けられます。
『紙の月』、『八日目の蝉』など普通に真面目に生きてきた女性が犯罪へと一線を踏みこえてしまう姿を描いてきた角田光代さんですが、彼女がそういった題材を書く背景については、こちらのインタビュー(『本の話WEB』の作家と90分」)が素晴らしかったので、角田さんファンの方は是非ご一読ください。
角田さんの本はもっともっとご紹介したいけれど、今回はなるべく今まさに本屋さんの新刊コーナーに並んでいる出版間もない本に絞ろうと思ったので、また機会がありましたら♫ 皆さんのお好きな角田本があれば教えてください。
明日は、吉田修一さんの『橋を渡る』をご紹介したいと思います!
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