今苦しくても、必ずその時は来る
「目に見える結果」を感じられるというのは、ごくごく稀なことです。それでもなお努力を続けるというのは簡単ではありません。だからこそ栗山さんは、こんなことも伝えてくれます。
たとえうまくいかないことがあっても、自分を傷つけてしまったり、自分はダメだと思い込んでしまったりする必要はありません。いつか、自分が活きるときが来るのです。これは僕が監督として、人が育っていく過程を見ていく中で、確信を持ったこと。実体験から信じていることです。
ところが、みんなに評価され、「すごい」と言ってもらえるのを待っている人が少なくない。でも、そんなことを待っている必要はないのです。
「明日はいいから、今日だけ一生懸命、生きてくれ」
選手によく言っていた言葉です。自分が今日これをやる、と決めて、それができただけでも素晴らしいことだと思うからです。結果に関係なく、まずそれができたことが素晴らしいのです。だから、「よく頑張った」と自分を褒めてやってほしい。
生きることは、しんどいことだと言われます。だからこそ、そうやって自分で自分を褒めて、生きていくしかないとも思うのです。
「毎日控え」でも腐らない
人生の主役は自分。自分軸で生きる。そんな言葉を目にしても、そもそも自分の価値を信じられないときがあったりします。周りから自分は見えてないんじゃないか? このまま一生打順なんて回ってこないかも? と気持ちが“くさくさ”してしまうことも。そんなとき突如、「よかったら次、バッターボックス立ってみる?」とバットを差し出してくれる人が現れること、ありませんか?
そういったチャンスは本当に突然で、心の準備が整っていないことも多いものです。でも、「まだ自信ないんで結構です」と及び腰になるのをぐっと堪えて、とにかく最後までバットを振り抜いてみよう。結果が出ても出なくても——。栗山さんの本を読み終えたとき、筆者はそんな気持ちになりました。
栗山英樹さんの“生き様”に触れる本書は、地味で、地道な毎日にこそ寄り添ってくれる言葉で溢れています。
『信じ切る力 生き方で運をコントロールする50の心がけ』
著者:栗山英樹 講談社 1760円(税込)
大谷翔平の二刀流も、WBCの世界一奪還も、「信じ切る力」がなければ実現しなかった。信じること、信じられることによって、毎日が変わり、生き方が変わる。その結果、人は大きく成長していく。運とは、日々の行動の積み重ねで、コントロールするもの。神様に信じてもらえる自分になるしかない。
ダメな自分に向き合い、相手にただ尽くし、日常のルーティンで「信じ切る力」を磨き続けた栗山英樹の、真摯で“実践的”な人生論。
野球を知らない人にも、中学生にも、ビジネスパーソンにも、すべての人に読んでほしい1冊です。
文/金澤英恵
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