「私は母にそっくり」。ようやく見つけた本当の自分とは?

2回目のデートでプロポーズされた相澤さんは、「アメリカで暮らす」「就職せず家事と育児に専念する」という条件も一緒に提示され、二つ返事でOKします。

アメリカで暮らすことは、迷走を続けてきた彼女にとって人生を変える絶好のチャンスでもありました。

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「将来なんてどうでもいい! 昔の、25歳の自分に戻りたい!」

鏡を見つめていると、急にそんな思いが込み上げてきたのです。彼なら、その願いを叶えてくれると思えました。

彼の家に越してから、私は日中、家事をこなすと同時に、日々、美容院やエステに通い、数ヵ月で20代の容姿を取り戻しました。

夫と一緒に実家に結婚の報告に行くと、家族は皆、喜んでくれました。案の定、母は娘がエリートサラリーマンと結婚すると親戚に言いふらし、

「やっぱり真理ちゃんはかっこいい」

親戚からはそんな反応が返ってきました。私の評価は下がっていなかったようです。その後すぐに子どもができ、第2子を出産した後、家族4人でアメリカに移住しました。

結局、母と同じ専業主婦になりました。絶対に避けたかった選択肢でしたが、社会に適応できない私が生きていくには、家庭しか居場所がなかったのだと今は受け入れています。

父と弟は気が付いていましたが、私は母にそっくりなんです。勉強は個人プレーなので、そこそこできますが、チームワークができないので、組織の中では活躍できないのでしょう。たとえ、司法試験に合格していたとしても、職務を全うできたかどうか……。

遠回りになりましたが、紆余曲折する中で、本当の私を見つけることができ、振り返れば楽しい「旅」だったと感じています。挑戦してきたことに全く後悔はありません。そして今、とても幸せな人生を送っています。
 

 


●著者プロフィール
阿部恭子(あべ きょうこ)さん

NPO法人World Open Heart理事長。東北大学大学院法学研究科博士課程前期修了(法学修士)。2008年大学院在学中、日本で初めて犯罪加害者家族を対象とした支援組織を設立。全国の加害者家族からの相談に対応しながら講演や執筆活動を展開。今まで支援してきた加害者家族は2000件以上に及ぶ。著書に『息子が人を殺しました』『家族という呪い』『家族間殺人』(いずれも幻冬舎)、『加害者家族を支援する』(岩波書店)、『家族が誰かを殺しても』(イースト・プレス)など。

 

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『高学歴難民』
著者:阿部恭子 講談社 990円(税込)

貧困で炊き出しの列に並ぶ、精神を病んで入院する、犯罪に手を染めて刑務所に入る……長年の努力が評価されず、居場所を求めてさまようことになってしまった「高学歴難民」の実態に迫るルポルタージュです。高学歴難民自身やその家族の視点でつづられる事例が実に多彩で、「幸福」のあり方について改めて考えさせられる一冊です。


写真:Shutterstock
構成/さくま健太
 

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