本は自分に確固たる軸を作ってくれるもの
著書『信じ切る力』では、信じ切る力を育てるための13の日常のルーティンが紹介されている。本のサブタイトル「生き方で運をコントロールする50の心がけ」を考えれば、運を良くするための13のルーティン、と読み取ることもできる。
その1番目に登場するのが「寸暇を惜しんで本を読む」だ。栗山さんの読書家ぶりは、野球界のみならず知られるところだが、忙しい中でどうやって本を読む時間を捻出しているか、ここにヒントがあった。たとえ数分でも、何もしない時間にはしないという栗山さん。それこそ5分も10つながれば50分になる、と本書にもある。
他にも、言葉を貼る、挨拶負けをしない、など気になるルーティンがいくつもあって、ぜひ真似をしたいところだ。
松信:最後に、書店経営者、読者のみなさん、これから日本を担っていく学生さんもいますが、本が好きでこの場においでになっている方々に、本との付き合い方をアドバイスいただけないでしょうか。
栗山:僕がアドバイスなんておこがましいです。逆に、僕ら一般読者、本を買う側に対して、本ってこういうものだよ、こんなにいいんだよ、という思いを一言いただいていいですか?
松信:僕がずっと思っているのは、本は一期一会だということです。書店で見た、あるいはネットのECサイトで見た。でも、「これいいな」と思った時に買わないと、本って逃げちゃうんです。なので、本は一期一会とお客さまや従業員にも伝えるようにしています。
栗山:気になっている本をどっさり買ってしまう僕は、間違っていないですね(笑)。
松信:私たち的にはありがたいし、いい買い方だと思います。
栗山:僕は今、監督から立場が変わって球団のフロントに入っているんですが、野球は今「こんなに劇的に変化している時代はない」というくらいの変化を迎えているんです。サイエンスが入ってきていて、チーム運営も、球団経営も変わってきている。
僕も一度、頭の中を真っ白にして野球を考えないとと思っているんですが、それでも大切な核になっていることがあります。先輩から教わったこともたくさんありますが、何より本から教わったことがたくさんある。それが、確固たる軸を作ってくれているんです。
実は選手たち、他のチームの選手からも、「監督、いい本ないですか」みたいなことをよく言われます。そうやって本に興味を持ってくれている野球選手も増えてきている。ぜひ、書店経営をこれからも頑張ってほしいです。
前回記事
「本がなかったら僕は壊れていたかもしれない」栗山英樹の人生を救った本と書店への思い>>
『信じ切る力 生き方で運をコントロールする50の心がけ』
著者:栗山英樹 講談社 1760円(税込)
大谷翔平の二刀流も、WBCの世界一奪還も、「信じ切る力」がなければ実現しなかった。信じること、信じられることによって、毎日が変わり、生き方が変わる。その結果、人は大きく成長していく。運とは、日々の行動の積み重ねで、コントロールするもの。神様に信じてもらえる自分になるしかない。
ダメな自分に向き合い、相手にただ尽くし、日常のルーティンで「信じ切る力」を磨き続けた栗山英樹の、真摯で“実践的”な人生論。
野球を知らない人にも、中学生にも、ビジネスパーソンにも、すべての人に読んでほしい1冊です。
文/上阪 徹
撮影/杉山和行(講談社写真映像部)
- 1
- 2
Comment