寅子の呼びかけに、あなたはどう応えるか
 

ただ、決して誤解してほしくないのが、『虎に翼』は男性と女性の対立構造を煽るドラマではないということ。それは、第5週のエピソードを見てもわかります。

汚職事件に巻き込まれた直言(岡部たかし)。父の無実を証明するため、寅子は仲間たちと奔走する。そこには、花岡(岩田剛典)や轟(戸塚純貴)の姿もあれば、穂高(小林薫)や雲野(塚地武雅)という心強い味方もいます。

『虎に翼』「男か女かでふるいにかけられない社会に、みんなでしませんか」寅子の呼びかけに私たちはどう応えるか【第5•6週レビュー】_img0
©︎NHK

『虎に翼』が男女の対立を主軸に置きたいなら、心の根っこにミソジニーを抱えた花岡や男子学生とのバトルをもっと引き延ばしてもいいわけです。きっとSNSも盛り上がったでしょう。でも、それをしなかった。あっさり矛をおさめ、もっと巨大な悪にみんなが協力して立ち向かう展開に舵を切りました。

なぜなら『虎に翼』は、女性たちがどれだけ虐げられてきたか、差別の歴史を照らし出すことはしても、だからと言って男性を貶めたいとか懲らしめたいとか、そんな負のエネルギーを原動力にしているわけではないから。

問題は、この社会の構造にある。ルールを都合よく解釈し、自分たちの思う通りに社会を動かす権力者に対して、私たちは何ができるのか。何をすべきなのか。寅子が闘う相手は、そこなんだと思います。

男か女かで篩にかけられない社会になることを願うと訴えた寅子は、最後にこう呼びかけます。

「いや、みんなでしませんか。しましょうよ」

女性差別に対して、女性だけが怒るのではなく、男性も一緒になって怒る。当然、その逆も然りです。あらゆる困っている属性のために、その他の属性の人々が立ち上がり声を上げる。そうやって、少しずつ、でも確実に、社会を今よりもっと良いものにしていきたい。

『虎に翼』は男性を悪者に描いているわけでも、男性を責めているわけでもない。男か女かで篩にかけられない社会にみんなでしませんか、という寅子の呼びかけに、あなたはどう応えるか。それを問うたドラマなのです。

『虎に翼』「男か女かでふるいにかけられない社会に、みんなでしませんか」寅子の呼びかけに私たちはどう応えるか【第5•6週レビュー】_img1
©︎NHK
 

NHK 連続テレビ小説『虎に翼』
出演:伊藤沙莉
石田ゆり子 岡部たかし 仲野太賀 森田望智 上川周作
土居志央梨 桜井ユキ 平岩 紙 ハ・ヨンス 岩田剛典 戸塚純貴
松山ケンイチ 小林 薫
作:吉田恵里香
音楽:森優太
主題歌「さよーならまたいつか!」米津玄師
語り:尾野真千子

【放送予定】
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
※NHK+で1週間見逃し配信あり
 

文/横川良明
構成/山崎 恵
 

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