どんな考えも他人事。マインドフルネスでネガティブ思考を「ただ眺める」

生きづらさを改善するには、18種類ある「スキーマ」がカギ。なかなか変わらないネガティブな自分とおさらばするには?_img0
 

マインドフルネスは、自動思考が発動して「自分のせいだ」「○○しなければならない」と考えて生きづらくなっているときに、自分をケアする方法としてとても有効です。

長期的に行なうことで集中力を高めたり、感情のコントロールがしやすくなったり、自己洞察を深められたりすることも知られています。

私たちの頭の中には、いつも何かのイメージや考えが浮かんでいます。

何も考えるな、といっても無理な話で、常に明日の予定や昨日起こったこと、楽しかった、つらかったといった感情や気分などが浮かんでは消えています。ときには、同じような考えやイメージが何度も浮かんできて、頭から離れないこともあります。

マインドフルネスでは、それらのイメージや考え、感情、気分からちょっと距離を置いて、よい・悪い、好き・嫌いなどの評価や判断をいっさいせずに、ただ眺めます

「あんなやつ死んじゃえばいいのに」といったひどい言葉も、「そんなこと考えちゃいけない」などと評価せず、「そういう感情が出てきたなあ」とただ眺めます。「こんなことを考える自分ってダメだな」という考えが出てきたときも、「あ、自分ってダメだな、という考えが出てきた」と、ただただ眺め、味わいましょう。

つらい感情がよみがえってきて、ついついそっちに心を持っていかれそうになるかもしれませんが、巻き込まれないで、「ほうほう、そういう感情も出てきましたか」と他人事のように観察します。

自分自身を大空だと思って、頭に浮かんでくる言葉やイメージが風船となってどこまでも飛んでいくイメージを思い浮かべると、いいかもしれません。風船にのせた言葉やイメージをじっと眺めて、「判断しない、評価しない」と心でつぶやきながら空の遠くに見えなくなるまで見送ります。

こうしていると、だんだんと、怒りや憎しみ、悲しみなどで高ぶっていた感情が落ち着いていくのが実感できます。

ネガティブな思考が止まらないときは、マインドフルネスで、心のどろどろを眺めてみましょう。今ここで、体がどうなっているのか一緒に観察しましょう。喉の詰まり、胸の苦しさがあれば、それも一緒に「ここにあるな」と眺めてみましょう。考え方の癖に気づいてスキーマを修正する際にも、マインドフルネスで自分の考えを観察するスキルがキモとなります。

日常的に、「今、ここ」に集中することを意識して、マインドフルネスができるようになると、先のことが不安になったり、過ぎてしまったことをくよくよ悩んだりすることが減り、すこしラクになります。

ただ、簡単なようで難しいことでもあるので(勝手に頭に浮かんでくる自動思考を手放すのは至難のワザです……)、すこしずつ気長に毎日実践していきましょう。
 

 


●著者プロフィール
増田史(ますだ ふみ)さん

精神科専門医、医学博士。2010年に滋賀医科大学医学部を卒業後、大学院時代から徐々にうつ状態となり、精神科を受診。適応障害と診断される。休職やカウンセリングで少しずつ回復し、今も回復途上。2021年より滋賀医科大学精神科助教。児童思春期分野を中心とした臨床を行なうほか、神経発達症の感覚特性に関する研究などに取り組んでいる。2児の母であり、常に疲労感がある。児の長期休み中には特に顕著となる。著書に『10代から知っておきたいメンタルケア しんどい時の自分の守り方』(ナツメ社)など。

 

生きづらさを改善するには、18種類ある「スキーマ」がカギ。なかなか変わらないネガティブな自分とおさらばするには?_img1
 

『あなたのままで、大丈夫。精神科医が教える自分で自分をケアする方法』
著者:増田史 主婦と生活社 1650円(税込)

うつ状態に苦しんだ経験のある精神科医が、自身の経験も加味しながら、しんどさを手放し、ラクに生きることができるようになる方法を、科学的根拠も交えながら解説します。心が疲れているときでもすんなり入ってくる易しい文章や、温かみのあるイラストが魅力。どのセルフケアも比較的容易で、すぐにでも実践することが可能です。


写真:Shutterstock
構成/さくま健太
 

生きづらさを改善するには、18種類ある「スキーマ」がカギ。なかなか変わらないネガティブな自分とおさらばするには?_img2