短文だから批判が光る

ーー短歌を読むと、なんだか日常が違って見える感じがします。世界がエモくなるというか、見える世界が変わりますよね。

坂口:自分が生活している中でも、この一瞬、何気ない仕草とか、そういうことが本当はものすごいことなんじゃないかなって思えてくる。そんな面白さがありますね。

ーーこれはどんな歌なんでしょうか。
 

 
太陽が沈んだだけで過ちを犯したような夜の街、人



坂口:これはシンプル。コロナ禍で、小池都知事がよく「夜の街」って言ってらっしゃいましたよね。時短営業してください、営業していたら「やめてください」みたいな感じで。朝から夕方まで働いているっていうのが人間の生活の普通だ、みたいになっているけど、私達が寝ている間に働いてくれている人もたくさんいて、その人がいないと私達は生きていけなくて。 

「自分の半径数メートルでこんなにも面白いことが起こってる」日常から宇宙を感じとる、短歌の魅力とは【坂口涼太郎】_img0
写真:Shutterstock

それなのに、なんでああいうことになってしまったんだろうなっていうのが、ちょっと不思議だなって思ったんですよね。この不思議だなと思うことも、もしかしたら2度と起こらないかもしれない。時代の変遷みたいなものを残しておきたいと思って、歌にしてみました。

ーーほかにも、社会批評のメッセージを込めてらっしゃる短歌を、最近もXにあげていらっしゃいましたよね。
 

 
結婚はしているのかと結婚ができない島で聞かれるふしぎ



東京レインボープライドのお写真と共にあげていた、この短歌がすごく私は印象に残っています。そういう社会への問いかけだったり、批評みたいなものは、短歌だからこそ表現できるものがありますよね。長文で書けば果てしないと思うんです。でも短歌は短いからこそ、静かな怒りが伝わってくる。思いのたけを、ある意味すごく鋭利に突き刺すみたいなところがあるのかなと、感じました。

坂口:それは本当に短歌のいいところかも知れない。この短歌に書いたことなんて、いつまででも喋っていられます。文字数多めになりますよね、普通は。



後編でも引き続き、短歌の魅力と涼短歌の背景についてお話を伺います。
 

文・構成/ヒオカ

 


『人生の午後を詠む短歌 #ごごたん』 とは?
何気ない日常の気づきや、ちょっと笑える瞬間、切ない気持ち……などを5・7・5・7・7の5句31音の歌体で表現する。短歌とは、古くは万葉集の時代から使われてきた一種の自己表現です。

特に、さまざまな人生経験を重ねてきた女性たちの歌には多くの共感の声が寄せられ、また生き方を見つめるヒントがたくさん詰まっていると話題を呼んでいます。
 
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