「仕事をペースダウン」して手に入れたもの③分相応の金銭感覚
仕事をペースダウンして収入が減ったから、ある意味当然と言えばそうなのですが、金銭感覚まで変わってきたように感じています。
以前、父から聞いた「知足(ちそく)」という言葉が私の中にずっと引っかかっていました。
知足とは、その漢字の通り、「足るを知ること」です。
辞書を引いてみると、
[老子第三三章「足るを知る者は富む」]現状を満ち足りたものと理解し、不満を持たないこと。
(広辞苑 第七版/岩波書店 より引用)
とありました。
この言葉がずっと引っかかっていた理由は、なぜ私は「足るを知ること」ができないんだろうと悩んでいたからです。
たとえば、大好きな洋服の買い物にしても、クローゼットにはすでにたくさんの洋服があるのに、それでもまた新しいものを買ってしまうこと。すでに足りているはずなのに、いつまでも満たされず、もっともっと……、あれも欲しい、これも欲しい……と求めてしまう私がいたんです。
でも、仕事のペースを落とし、子供と毎日充実した時間を過ごし、しっかり睡眠もとって、健康的な生活を送るようになってきたら、ようやく“当たり前の幸せ”に感謝できる余裕が出てきたように思います。今思うとおそらく、買い物をすることで、忙しすぎるあまりに溜まったストレスを発散したり、新しいものを手に入れることで満たされていない心や自分の自信のなさを埋めようとしていたのかなと思います。
今の私は「足るを知る」状態に近づけているという実感があります。
“お金で買えない価値がある〜〜”というフレーズが話題となったマスターカードのCMが以前ありましたが、「子供との時間」「健康」「分相応の金銭感覚(足るを知る)」、この3つはまさに仕事をペースダウンしたからこそ手に入れた、お金では買えない貴重な気づきだったと思っています。
構成・文/高橋香奈子
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