「サリエンスネットワーク」が脳のスイッチを入れる

スマホの使い方「わからない」…が若返りの秘訣!シニアの「退屈ボケ」にデジタルストレスが効く理由_img0
写真:Shutterstock

脳はいつもDMN状態であるわけではありません。難しいタスクや危険が迫ったときには、DMN状態を脱し、活発なモードに入ります。

このように、脳のモードを切り替えるときに活性化するのが、サリエンスネットワーク(Salience Network:SN)と呼ばれる脳のネットワークです。そして、シニアの脳を元気にしてくれるのが、このサリエンスネットワークなのです。サリエンスネットワークが活性化するのは、脳に一種のストレスがかかったときですが、これはシニアにとってはいいストレスと言えるでしょう。

サリエンスネットワークは、新奇体験をするときに活性化します。新奇体験といっても、大げさなものでなくても大丈夫です。

たとえば、私が毎朝、病院のそばのコンビニで買っているコーヒーを駅のそばのスターバックスのコーヒーに変えてみるのも新奇体験です。まず、普段は行かないスターバックスまで歩かなければいけません。旅というほどのことではありませんが、普段通らない道を歩くわけですから、「ここはどこだろう? いつもの道とはどのようにつながっているんだろう?」などと、いつもは働かない脳の部位が稼働します。

それに、スターバックスでのコーヒーの買い方はコンビニとは違いますから、そこでも脳は働きます。コーヒーの味も違うでしょうから、いつものコンビニのコーヒーを飲んでいるときとは別の脳の部位が刺激され……と、新奇体験をしているときに、サリエンスネットワークは活性化します。

このサリエンスネットワークが脳を元気にしてくれるわけですが、歳を重ねたシニアの脳は、脳が省エネのDMN状態であることが増え、サリエンスネットワークが活性化しづらくなっています。ですから、新奇体験によって脳に刺激を入れることが重要になるのです。

 

多くのシニアが恐れる、いわゆる「ボケ」の正体は、脳の省エネ状態が続いたことによる衰えです。そこに病気が潜んでいる場合もありますが、多くはありません。

元気な若者でも、まったく刺激がない環境に何年も置かれたら、脳は衰えます。使わない筋肉が衰えるのと同じです。

ですから、筋肉に負荷をかけて筋肉の力を維持、あるいは強くするように、脳にも刺激が必要なのです。