ストレスこそが脳への刺激

スマホの使い方「わからない」…が若返りの秘訣!シニアの「退屈ボケ」にデジタルストレスが効く理由_img0
写真:Shutterstock

「慣れないスマホを使うのは大変じゃないか」と心配している人も多いと思うのですが、むしろ、大変であればあるほど脳に負荷がかかるわけですから、脳は元気になります。

ロンドンのタクシードライバーとニューヨークのタクシードライバーの脳を比較した研究があります。なぜロンドンとニューヨークなのかというと、道が対照的だからです。ロンドンの道は複雑に入り組んでいることで有名ですが、ニューヨークの道は碁盤の目のように整備されていて、迷うことなく楽に運転できます。

さて、比較の結果、何がわかったかというと、ロンドンのドライバーのほうがニューヨークのドライバーよりも、脳細胞同士をつなぐシナプスが発達していたのです。これは、複雑な道を運転することで脳に負荷がかかり、それが脳の発達を促したものだと考えられています。

また、別の研究ですが、ロンドンやローマといった道が入り組んでいる街と、ニューヨークや京都のように道が綺麗に整備されている街の住人とでは、認知症の発症リスクが数倍違うこともわかっています。もちろん、道が複雑な街に住む人のほうが認知症になりにくいのです。

つまり、道に迷うとか、正しい道を探して地図を見るといった出来事の一つひとつが脳への刺激になり、シナプスの発達や認知症リスクの低下につながっているということです。

道に迷いやすい街よりも迷いにくい街のほうがいいじゃないか、と思われるかもしれませんが、脳のことを考えるとそうは言えません。日常的に新たな刺激に触れている若い人の脳ならともかく、シニアにとっては、脳を使わざるを得ない状況のほうが望ましいのです。

それは、シニアの脳には適度なストレスが必要だという意味でもあります。もしあなたが慣れないスマホを使うことに抵抗を覚えるなら、むしろ歓迎すべきです。

「このアプリはどう使うんだろう?」と悩めば悩むほど、脳は元気になります。

 


●著者プロフィール
内野勝行(うちの・かつゆき)さん

脳神経内科医。医療法人社団天照会理事長、金町駅前脳神経内科院長。脳神経内科を専門として、これまで約1万人の患者を診察。薬物療法だけでなく、栄養指導や介護環境整備、家族のサポートなどをふまえた積極的認知症治療を行っている。千葉県の小学校では、AEDの使用方法を教えるなど「命を守る学習」を開催するほか、テレビ・ラジオ・雑誌等メディア出演多数。著書には『1日1杯脳のおそうじスープ』(アスコム)などがあり、ベストセラーとなっている。

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『退屈ボケの処方箋 脳はスマホで若返る』
著者:内野勝行 辰巳出版 1540円(税込)

約1万人の患者を診てきた脳神経内科医の著者が、「デジタルを使いこなしているシニアは元気」ということに気づき、シニアにとっての「デジタルのメリット」を医学的根拠に基づいて紐解いていく1冊。人類史上、はじめてシニア世代がデジタルを手にした時代だからこそ前向きに取り入れたい、高齢者の「暇」「退屈」を撃退するデジタルの活かし方を伝えます。


構成/金澤英恵
 

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