大迫力のサウンドに鳥肌、哀しくも美しい感情表現にうっとり
なかでも印象に残るのは、怪人ファントムの棲家です。オペラ座の地下に隠されたその場所は幻想的かつ不気味な空間が広がる水の洞窟。仮面の下に隠されたファントムの憎しみと哀しみが積み重ねられた場所でもあります。映画版では劇場版で描かれなかったファントムの出生の秘密も明かされます。
水の反射で光が揺らめくたびに、荒々しさの裏にある繊細な心まで見えてくるようで、彼の表情にくぎ付けになってしまうシーンが多々あり。ファントム役を演じた若き日のジェラルド・バトラーによるロック調のテノールの歌声も耳に残ります。クリスティーヌ役のエミー・ロッサムが奏でる美声とも相性ばっちりです。爽やかイケメン貴族ラウルを演じる3人目の主演パトリック・ウィルソンも実力を発揮し、クリスティーヌを巡る恋の闘いをいい感じに盛り上げます。
そして、感情が高まるシーンで使われるのがフルオーケストラ。総勢100人に上る大迫力のサウンドは鳥肌ものです。誰でも耳にしたことがある名曲が重厚に鳴り響く贅沢さにうっとりします。
加えて、視覚的な贅沢さも味わえてしまいます。2万個に上るフルカットのクリスタルから成る巨大シャンデリアは物語の鍵ともいえる存在で、あのスワロフスキー社が全面的に協力して映画のために作られたもの。スワロフスキー製のクリスタルはクリスティーヌの舞台衣装にも施され、大画面いっぱいにキラキラ感が伝わってきます。
「映画版は視覚的にもサウンドも素晴らしく、感情表現もより深い」と、ロイド=ウェバーが太鼓判を押した作品が20年の時を経て、4Kリマスター化された価値は十分にあり。目にも耳にも心にも美しさが響く、とっておきの時間を映画館で過ごせるはずです。
『オペラ座の怪人 4Kデジタルリマスター』
6月14日(金)TOHOシネマズ 日比谷 他全国ロードショー
製作・脚本・作曲:アンドリュー・ロイド=ウェバー
監督:ジョエル・シュマッカー
出演:ジェラルド・バトラー/エミー・ロッサム/パトリック・ウィルソン 他
配給:ギャガ 2004年/アメリカ/カラー/シネスコ/4K/141分/字幕翻訳:戸田奈津子
(C)2004 The Scion Films Phantom Production Partnership
構成/山崎 恵
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