簡単に白黒をつける風潮に違和感


板垣:社会でも生殖医療の保険適用範囲が広がるという国の動きもあったり、東京都が卵子凍結に助成金を出すと発表して応募者が殺到したり、まさに生殖医療に対して社会的関心が非常に高まる時期だったということもあり、このタイミングでやりたいなと思いました。

 

あとは、ここ数年、あの人は悪い人でこの人はいい人とか、あの国は悪い国でこの国はいい国とか、そういったことをみんなが簡単に決めて批判したりする風潮がすごくあるなと思っていて、本当にそんなに簡単に決めていいのかなって、私個人としてすごく不安に感じているというか、怖いなこの世の中、と思っているところがありました。このドラマは「生殖医療」というものがテーマにはなっていますけど、簡単には決められない大事な問題、それに対して人間はどう向き合っていくべきかを示してくれる作品になると思いました。

簡単に白黒をつける社会に違和感、代理母がテーマの『燕は戻ってこない』プロデューサーが描く簡単には断罪できない人間の愚かさと欲望_img0
写真:shutterstock

ーお金がなく、切迫しているがゆえに身体を売る主人公と、子どもを強く望んだけど不妊治療が実らなかった夫婦という、それぞれの立場の深い事情や悩みが描かれるがゆえに、簡単には断罪できない、複雑さがありますよね。

板垣:すごく悩んでいる方が多い問題で、代理母という選択をせざるを得ないくらい切羽詰まって苦しい思いをしたりするよねって思うし、ドラマではちょっとずつみんな間違ったことをしちゃうんですけど、それぞれの事情があるし、ものすごく切実な悩みだから、断罪できないと思うんです。この人たちは悪いとか、この選択はひどいとか、あまりにもそういう見え方にならないようにしようと思いました。