自分と向き合うきっかけを作る

ー最近、ドラマで社会問題を扱うことの意義が問われてきていると思います。『燕は戻ってこない』は大きな問題提起にならざるを得ないテーマだと思いますが、ドラマを作る人としてエンタメはどういう役割を果たすと思いますか。

板垣:私はただただ笑えて、次の日には忘れているけど、その瞬間はすごい笑ってて、みたいなエンターテイメントも大好きなんですよ。でも、心にグサグサきて、次の日も後を引くような、私が今見たものは何だったんだろうってすごく考えさせられる、問題を突きつけられるっていうのもエンタメの一つの役割だと思っています。そういうドラマがあってもいいじゃないかと思うし、自分が作るんだったらそっちの方が私は好きですね。

簡単に白黒をつける社会に違和感、代理母がテーマの『燕は戻ってこない』プロデューサーが描く簡単には断罪できない人間の愚かさと欲望_img0
 

優れたエンタメって、自分が知らなかった自分に気づくものだと思うんです。普段は気にしてなかったけど、エンタメを通して自分を再発見するというのは、よくできているフィクションだからできるところだと思います。人間って、自分といかにちゃんと向き合っているかがすごく大事だと思うんです。みんながちゃんとそういうことを考えると、人にも優しくなれたりもするだろうし、世の中の想像力が少し豊かになったりするだろうと思います。エンタメを通して自分と対話するきっかけを作ることができたらいいなと思います。


 
撮影/柏原力
取材・文/ヒオカ
 

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