『虎に翼』『燕は戻ってこない』など今期はNHKがすごい


――今期イチオシのドラマを教えてください。

明日菜子さん:NHKの朝ドラ『虎に翼』がとてもおもしろいです。今までの朝ドラの歴史を感じるような、真正面からフェミニズムや女性の権利問題を扱った社会的な内容です。

でも堅苦しくなく、日常の朝に溶け込むようなキャッチーで見やすい作品になっていると思います。


――他におすすめのドラマはありますか。

明日菜子さん:2024年春クールはとにかくNHKドラマが強くて『燕は戻ってこない』もおすすめです。桐野夏生さんの小説が原作で、石橋静香さん演じる主人公が、代理母になるというストーリーです。

日本で代理母出産は法的に禁止されているので、ちょっとSF的な要素もあるのですが、なぜ、主人公が代理母になる道を選んでしまったのかが、すごくロジカルに描かれています。感情移入は出来なくても、それぞれのキャラクターの行動原理がとても明確なんですよね。

特に「貧困」を示す描写が本当にすごいなと思って。貧困と聞くと、お金がないとか、食べるご飯がないという物的なことを想像しますが、それ以外にも「少ない選択肢の中から選ばざるをえない」とか「もっといい方法があるはずなのに本人にはその選択肢がなにかわからない、そこにアクセスできない」という部分を描いているのが、今までの現代女性の問題を扱った作品の中でも、より深いところにメスを入れてる印象がありますね。


――先ほど、男性同士が連帯するドラマも見てみたいとおっしゃっていましたが、今後のドラマで、こういうテーマや内容で作ってほしいという要望や期待はありますか。

明日菜子さん:最近は考察ドラマがブームになっているので、刑事ドラマや医療ドラマ、謎を追求した1話完結型の作品がどうしても多くなっていますが、ラブストーリーやホームコメディーなど、日常を描いた作品がもっと増えてほしいですね。

その時代の空気感みたいなものが一番反映されやすいジャンルだと思うので。個人的にはラブストーリーが好きなので、ラブコメをもっとお願いします!ラブコメでしか摂取できない栄養があります!

 


ドラマは感想や解釈を語るという楽しみ方もある


――ミモレ世代に提案したいドラマの楽しみ方を教えていただきたいです。

明日菜子さん:Xを見ていると、今ってドラマをただ見るだけではなく、感想を書くなど自分の気持ちを言語化したい人が増えているのを感じます。もちろん作品を楽しむのが一番大切なのですが、自分がどう感じたのかを考えてみたり、誰かの解釈を読んでみたり、もう一歩踏み出すようなドラマの楽しみ方もあることを幅広い世代の人に知ってほしいです。

――最後に、明日菜子さんがドラマのコラムを書く時に心がけているポイントや、よく書くことが多い内容があれば教えてください。

明日菜子さん:「好きも嫌いも理由を書く」をモットーにしています。好きな理由はいくらでも言葉が出てくるけど、なんで好きじゃないと思ったかを言語化するのは結構難しいんですよね。それを世に出すかどうかは別の話ですが、「なんとなくイヤ」で終わらせるのではなく、自分の中ではネガティブな理由もきちんと言葉にするようにしています。

そして、全てのドラマに関わっている全ての人へのリスペクトを忘れないことです。私が大好きな作品も、私にフィットしなかった作品も、その気持ちは変わりません。いつも楽しいドラマをありがとうございます!

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次回の「SNSで見つけた『バズり人』さん」もお楽しみに!



構成・文/大槻由実子
編集/坂口彩
 

『燕は戻ってこない』は現代女性の貧困をリアルに描写している!「シスターフッド」の次は、男性が連帯するドラマが見たいドラマウォッチャー・明日菜子さん_img0
 

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