「高校卒業」の肩書きを手に入れた先に待っていたのは?
恋人や友だちをつくることができ、定時制高校も無事に卒業した彼女は、社会とつながるべくアルバイトに応募しますが、ことごとく落ちてしまい、ショックに打ちひしがれます。
「体がなかなか動かない。気力が出ない。落ち込みが激しい。また、以前もあった、本や新聞が読めなくなる、という症状も出ていた。これが、この3年間、騙しだましやってきた代償か?」
定時制高校に通い続けた3年間で積み上げた、社会に出ても通用するという自信がもろくも崩れ落ちてしまいました。そこで彼女は、これまでの心療内科に通うのをやめ、評判のいい別の精神科病院へと通院することにします。
「何度目の受診だったか忘れたが、先生が私のこだわりや、時折、感情のコントロールがきかなくなり暴れる、という部分に着目した。そして、心理検査を受けてみてはどうか、と提案されたのだ」
さまざまなテストを受けた結果、ふみさんは言葉や文章の理解が得意な反面、耳から聴きとる情報を覚えておくのが苦手で、口頭説明や、ガヤガヤしたなかで必要な会話だけに集中する力が弱い、ということが判明します。一方、発達障害に関しては、グレーゾーンで、ADHD(注意欠如・多動症)傾向がみられるが、確実にそうとは言いきれず、そうではないとも言いきれない、というあいまいな結果になってしまいました。
「働きたい」という気持ちに一区切りついた出来事とは?
その後、社会福祉士・精神保健福祉士の資格を持つNさんを紹介された彼女は、Nさんに「障害年金が受けられるかもしれないです」と提案されます。
「重症である」
「障害年金」という言葉でようやく自分の生きづらさの原因とその深刻さを知ったふみさんは、精神科の先生に自分の置かれた状況を訊ねます。
「先生に“就労の可否”を問うと、『今すぐは無理だね』と返ってくる。ですよねー」
ようやく「働きたい」という思いに一区切りつけることができたふみさん。ここからは障害年金の受給に向け、彼女の長い闘いが始まるのでした。
難波ふみ(なんば ふみ)さん
1983年 神奈川県生まれ、千葉県育ち。幼少期に父から受けた暴力がトラウマとなり、さまざまな精神障害を引き起こす。この世に生を受けてから一度も働いたことがない。第1回「気がつけば○○ノンフィクション賞」に応募、最終選考まで残る。趣味は読書、好物は甘い物。ちなみに、本書発売年は、41歳の年となる。
『気がつけば40年間無職だった。』
著者:難波ふみ 古書みつけ 1650円(税込)
強迫性障害を患い、40年間一度も働いたことがない女性が、いじめ、不登校、潔癖症、父からの虐待などの艱難辛苦を振り返りながら、それらによって刷り込まれたコンプレックスを克服すべく、友だちづくりや恋人づくりに奮闘した経験も告白。「ひきこもり」や「ニート」に対する先入観をくつがえすエピソードを、ユーモア交じりにつづります。
構成/さくま健太
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