結婚は、愛よりもスペックや安定が大事?


美保さんは「土地柄」「父親の昭和の価値観」と言いますが、しかしつい10〜20年ほど前まではたしかに「女性は30歳までに結婚すべき」という風潮も強く、人気ドラマ『やまとなでしこ』でも似たセリフが頻発していた記憶は筆者にも鮮明に残っています。

「そう、うちの家族はテレビの影響を受けやすい面があるんです。当時両親は還暦に近かったのですが、まだ孫がいないことにも焦っていました。そんなとき、やはり人気バラエティ番組でとある専門家が『娘の生んだ孫の面倒を見ると寿命が伸びる』みたいなことを言っていたんです。

詳しい内容は忘れましたが、どこかの研究結果で、娘の孫と触れ合えば平均10年長生きすると証明されているとか。私には独身の兄がいましたが、そのテレビを観ていた両親は『やっぱり美保に孫を産ませないと!』と本気で言っていました」

新婚初夜から始まった、妻の地獄...。愛より肩書きで選んだ“高スペック医師”との夫婦生活の苦痛_img0
 

父親と娘との話し合いでは、このバラエティ番組の一説も持ち出され、父親は真剣に美保さんを説得したそうです。

「美保はパパとママに長生きして欲しいだろ? そもそも27年生きて他に結婚したい男がいたわけでもないのに、今後もできるわけがない。今結婚するのがお前の幸せなんだと、父親にそこまで強く言い切られるとプレッシャーもありましたし、否定もできませんでした

 

たしかに元夫は優秀な医師で、専門職ならば生活の心配もない。裕福ながらも経営者の苦労も知っている美保さんは、父親の言い分に納得してしまう面もありました。

「さらに父親は、とりあえず結婚して、できるだけの努力をして、それでもダメだったら離婚していいと言ったんです。私も独身を貫きたいわけでは決してなかったし、これが適齢期女の真っ当な道なのだと思い……

外見も人格も好きではないけど、父親の言うように、スペックと安定した経済力のほうが結婚生活には必要で、愛と幸せはあとからついてくる。そう信じて結婚することにしたんです」

しかしその選択が、美保さんの地獄の始まりだったのです。