猫と一緒に暮らす人にとっては、家族のように大事にしている猫と1日でも長く暮らせるのは幸せなことです。その一方で、猫も飼い主も年齢を重ねていくことになります。
それでも、猫とともに暮らしてきた時間はかけがえのないものですし、シニアになった猫だからこそ、愛着もひとしおです。そこでミモレでは、シニア猫(ここでは10歳以上と定義)と暮らす人たちのお話に耳を傾けてみようと思っています。
今回登場するのは、都内で11歳のシニア猫と暮らすOさん。高齢女性の大家さんが一人で住む一軒家の一部が賃貸物件になっており、Oさんはそこに入居しています。以前から大家さんは一匹の猫を飼っていましたが、認知症が進行し、猫の世話ができなくなっていきました。動物を飼うことに興味はあったものの、まさか自分が飼うとは思っていなかったOさんですが、一杯のコーヒーがきっかけとなり、やがて大家さんの猫を引き取ることを決意します。
<飼い主プロフィール>
Oさん(50代)台湾リピーターの会社員。動物が苦手な親の元で育ったため飼育経験はなし。一軒家の2階の一部が賃貸という物件に長年住んでいる。大家さんはその家に住む80代後半の女性。一人暮らしで以前から猫を飼っていた。しかし、大家さんが認知症になり、猫を世話できる状態ではなくなったことから、2022年に猫を引き取ることに。40代後半にして初めて猫と一緒に暮らし始め、現在3年目に突入。
<同居猫プロフィール>
夢(11歳)麦わらのメス猫。2012年生まれで、子猫の時に大家さんの飼い猫になる。昼は外、夜になると家に帰るという生活を続けていた。大家さんにしか懐かず、Oさんや近所の人には一切近づこうとしなかった。しかし、大家さんの認知症が進行して飼育ができなくなったために、近所の人たちと相談の上、同じ家に住んでいたOさんの飼い猫となる。性格は落ち着いていて、賢い。大声でにゃーにゃーおしゃべりをするのが好き。
私は大家さんが住む一軒家の、賃貸用にリフォームした物件に住んでいます。大家さんとは時折言葉を交わすことがあり、猫を飼っていることも知っていました。夢は大家さんの2匹目の猫です。以前は三毛猫を飼っていたのですが、どうやら亡くなったようで、いつの間にか子猫の夢を飼い始めていたのです。高齢者は猫を終生世話できないため、保護猫が譲渡されることはまずないのですが、どうやら大家さんと離れて暮らす娘さんが飼うことにして子猫を譲り受け、大家さんの元に来たようでした。
夢は人見知りで、他人を見ると忍者のように逃げていくくせに、大家さんにはベッタリ。でも、コロナ以前から認知症の兆候があった大家さんは、コロナ禍で重症化。夜中に徘徊したり、夜中に大声でしゃべったりするようになりました。私は同じ建物内に住んでいたので、よく夜中に「ここにいなさいよ!」「静かにしてね」と猫に話しかけているのが聞こえました。
そんな状態にも関わらず、大家さんは猫がいることを理由に施設への入居を完全に拒否。近所の人も大家さんと猫のことを心配していましたし、私もどうなるんだろう、と遠巻きに見守っていました。ある時、デイサービスの人が大家さんの家に入った時、部屋の中はぐちゃぐちゃで、猫トイレは真っ黒。立派なダイニングテーブルの上には、カリカリが袋から大量に出されていて、夢だけでなく、大家さんもこのカリカリを食べていた形跡があったそうです。
私は実家で動物を飼った経験もないし、会社があるので日中は家にいません。それに賃貸住まいなので、自分が動物を飼うなんてことは一切頭の中にありませんでした。だから、大家さんの猫はどうなるのかなと気になっていたものの、近所の人に「Oさんが夢ちゃんを飼ってあげたら?」と言われても、「いや、無理無理!」とはなから否定していました。
そんなある日のこと。私はある旅行系YouTuberさんの大ファンなのですが、その人は自家焙煎の珈琲店オーナーで、東京にも豆を卸していることを知りました。調べてみると、うちのすぐ近くにある保護猫シェルターでそのコーヒーが飲めることがわかりました。私はそのコーヒー目当てでそのシェルターに足を運んだのですが、その時にはじめて“保護猫”という存在に触れたのです。
保護猫というのは自分が思っている以上に地域に存在していて、過酷な環境に置かれているということ。保護したら終わりではなく、病院に連れて行く、去勢手術をする、里親を探す、などと大変なことばかりだということ。また、大家さんのような高齢者とペットの問題、多頭飼育問題など、このシェルターを通して保護猫をとりまく、いろんなことを知るようになったのです。
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